2021年2月6日(土)

▼全国紙の他県の支局長が部下からのセクハラの訴えで左遷されたことがある。同期だという津の支局長が「バカなことをして」と吐き捨てるように言ってから「うちの女性記者に手を出すなんて」と続けた。魅力の問題か、意識が高いということかと戸惑ったことがある

▼どちらの含みもあるか。男尊女卑の背景を感じさせもしたが、男社会の中で、女性の先駆者が女というより、人間として強い信念を持って行動し、道を切り開いてきたのはよく知られる

▼東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が発言を撤回し、謝罪した。委員の女性枠拡大を議論して「女性がたくさん入っている理事会の会議は時間がかかります」などと述べた。組織委の女性委員は「わきまえておられる」とも発言して、批判が広がっている

▼現在の風潮にあえて異論をはさむというのではなく、問題とも思わず発言して問題になるというのが森会長の〝失言〟の特徴だ。委員枠の発言について、謝罪会見では「(男女を問わず)どなたが選ばれてもいい。無理なことはしない方が」の趣旨だったと釈明している

▼この論理が事実上、女性を閉め出すことになっていることに気は回らなかったのだろう。女性委員が半数を占める会議に出席することがある。各組織の持ち回りで参加してくる女性の発言はなく、組織の幹部としての委員は男性に劣らず発言し、その都度新たな視点を教えられる

▼女性がより鍛えられる構造はそう変わっていないのではないか。元首相のなにげない一言が社会の女性の現状を雄弁に物語っている。