<まる見えリポート>女子サッカー・なでしこ1部 伊賀、33年目の再出発

【必勝祈願を終えて記念撮影する伊賀FCくノ一三重の選手、スタッフら=1月、伊賀市の菅原神社で】

女子サッカーのなでしこリーグ1部に所属する「伊賀フットボールくノ一三重」が始動した。昭和51年から三重県上野市(現伊賀市)で活動する「伊賀上野くノ一サッカークラブ」が母体で、平成元年に始まった日本女子サッカーリーグにも第1回から参加してきた国内女子サッカー界きっての古豪。今年9月開幕の日本初の女子プロリーグ「WEリーグ」の初代11クラブから漏れた悔しさもバネに、今季からアマチュア最高峰の位置づけとなるなでしこリーグで再出発する。

新体制発表会は1月に市内で開かれた。なでしこリーグ1部優勝、三重とこわか国体優勝などとともに、全日本女子選手権(皇后杯)ベスト4以上を目指すとする粟野仁博副代表は「今年WEリーグのチームと戦える試合はこれ(皇后杯)だけ。伊賀ここにあり、というところを見せたい」と述べ、WEリーグ勢への対抗意識を露わにした。

今季を戦う選手は25人。昨季所属の27人中11人がチームを離れ、そのうち4人はWEリーグに初年度参戦するチームへ移籍した。一方で、なでしこジャパン入りの経験を持つMFで前主将の杉田亜未や、在籍年数が10年を超える守備の要、宮迫たまみらベテラン勢を含む16人が残留。フロントの1人は「戦える戦力は残った」と話す。

指揮官は今季で通算7季目の大嶽直人監督。なでしこリーグ1部復帰直後の2019シーズンは果敢なプレッシングからの「全員攻撃・全員守備」で10チーム中4位と善戦した。9位で終えた昨シーズンを「2点目、3点目を取る試合が少なかった。相手陣内でプレーする時間も短かった」と振り返り、リーグ優勝とともに「複数得点」を目標に掲げる。

新加入選手は9人でそのうち6人が今春大学や高校を卒業する若手だ。チームは昨年から積極的に新卒選手を獲得している。杉田に代わり主将に就任したMFの作間琴莉は「若い選手が増えてきた。(年齢が)上の選手とうまくまとめて競争意識を持ったチームを作りたい」。2017年に当時なでしこ1部の岡山湯郷から移籍し今季で在籍5年目の23歳は「1人の選手としてはしっかりポジション争いをしていくこと」と力を込める。

日本女子サッカーリーグに第1回から参加し、企業チームを経てクラブチームに変わった後も国内トップチームとして活動し続けてきたくノ一。「WEリーグ」へも参入を申請したが審査の結果、初年度の参入は見送られた。

ホームスタジアムの伊賀市立上野運動公園競技場が「個席5千席以上」「大型映像装置の設置」などのWEリーグの試合を開催する基準を満たしていなかったことが最大のネックになった。参入見送りを受けて昨年秋に開かれた会見で、粟野副代表は「インフラがないということで歩みを止めなければならないことは正直残念」と心情を吐露した。

WEリーグは2期目以降新規参入によってクラブ数を増やしていく方針。長く市民球団として活動してきたくノ一は行政と連携し、スタジアム問題のできるだけ早い時期の解消を図りたい考え。幅広い支持を得るため4月開設予定の公式チャンネルでの情報発信などにも力を入れるが、チームの躍進もアピールには欠かせない。特に今年秋県内での開催を予定する三重国体を「県民に広く目に触れてもらえる」(フロント陣)絶好の機会ととらえ、令和元年の茨城国体以来2年ぶり5回目の国体優勝を必達目標に掲げている。