2021年1月8日(金)

▼使ってもいない薬を使ったことにして診療報酬を不正請求していたという三重大付属病院麻酔部を舞台にした形式犯みたいな事件が医療機器納入を巡る贈収賄事件へと飛び火した。前者の診療報酬不正請求に伴う事件は津地検が、後者の贈収賄絡みは愛知県警と三重県警の合同捜査本部が―捜査機関が寄ってたかって同大同病院麻酔部に攻め込んでいる感がある

▼診療報酬不正請求絡みは昨年9月の三重大付属病院の発表で明るみに出た。同3月にカルテの改ざん問題として発覚し、第三者委員会を設置して調査を続けてきたという。寄付金狙いで特定の製薬会社の薬品使用を指示する麻酔部教授の存在があったとされ、津地検へ告発。12月に改ざんした疑いで准教授が逮捕された

▼その延長線で、製薬会社との関係や元教授の関与が取りざたされたが、元教授が医療機器メーカーとの関係で逮捕された。発表は愛知県警だから、合同捜査本部とはいうものの、三重県警は従属の立場か。改ざん事件で津地検は同日、診療報酬詐欺容疑で准教授を再逮捕したが、愛知県警にしてやられた印象は強い。上野総合市民病院長や尾鷲市教育長(肩書はいずれも当時)事件など、贈収賄絡みはいつも愛知県警に摘発される。三重県民としては歯がゆいかぎりだ

▼「刑事希望者が減ってきた。特に給料がいいわけでもないから、勤務時間が決まっている部門を希望するのだろう。刑事にやりがいを感じる時代ではなくなってきた」というベテラン刑事の嘆きを聞いたのは10年前。事件が複雑になるほどその影響は大きいのかもしれない。