<まる見えリポート>県の就職支援 オンラインやバーチャル駆使

【昨年11月に津市で行われた就職説明会。今年はコロナ感染予防対策として対面方式は減り、オンライン中心となった】

今年初めまで売り手市場だった労働市場だが、新型コロナウイルスで就職活動が困難となっている学生や就労希望者が増えている。対面方式の企業説明会や面接といった従来型の採用方法が様変わりしたほか、景気悪化で採用数を絞ったり、インターンシップを実施する企業が減少したりしているのが背景にある。そんな中、県ではオンライン就職合同説明会やバーチャル企業見学会を実施するなどして、コロナ禍での就職支援を模索している。

厚生労働省と文部科学省がまとめた10月末現在の来春卒業予定の大学生の就職内定率は69・8%で前年比7ポイント減少した。70%を割ったのは5年ぶりだ。
県内でも、県教委が実施した県立高校の来春卒業予定者の就職内定率は77・2%で前年同期に比べ10ポイント低下。企業の採用開始が一カ月遅れたのが一因とされるが、3月までに上昇できるか不透明感も漂う。県は県内大学生の就職内定状況は集計していないが、大学関係者らに聞き取ったところ、前年に比べ内定率はやはり数ポイント減少しているという。

就職活動が困難となっている要因の一つに、企業が感染予防対策などでインターンシップの実施を控えていることにある。県が就職協力協定を結んだ県外の20大学にアンケート調査を行った結果、受け入れ企業数が例年より少ないと回答した大学が半数以上に上った。

雇用対策課は「近年、インターンシップは企業側、学生側にとって採用の決め手となる重要なツール。それが減少しているのが大きい」と強調。また、採用数を減らしている企業もあるとし、就職難の学生らのキャッチアップが課題となっている。

コロナ禍で変化したのが対面による就職活動だ。感染予防対策としてオンラインによる就職説明会や採用面接などが増えた。県でも例年開いてきた合同就職説明会をオンライン方式に切り替えたところ、参加企業が40社と大幅に増加。学生ら就職希望者も手軽に参加できるとあって最終的に1000人が視聴した。対面の合同説明会に1000人が参加することはまずなく、オンラインならではの効果が発揮された格好だ。

とはいえ、オンライン方式は企業側の一方的な説明になることが多く工夫が必要となる。県では6月にオンライン合説を開いた後、二度にわたり企業と学生らが双方向でやりとりできる説明会を実施。企業と学生らが対面に近い形で質疑応答できる形に対応するようにした。

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リアルタイム配信が中心のオンライン就職説明会とは別に、1月中旬から新たに手がけるのが「バーチャル企業見学会」だ。例年はバス見学会として、就職希望者がバスで企業回りを行っていたのを全面的に切り替えた。

具体的には、ユーチューブに専用チャンネルをつくり、会社の業務内容や実際に働いている社員の話などを盛り込んだ1社10分程度の動画を配信する。参加者が企業見学に行かずとも、社内の雰囲気が分かるようにした。

リアルタイム配信では決められた時間に視聴しないといけないが、希望者が「隙間時間」を利用して視聴できるのが特徴。動画をまとめてプラットフォーム上で配信することで、企業が単体で行うより幅広くPRできる。就職難の学生らを対象に、「就職直結」として、すぐにでも人材を欲している県内企業5社が参加するのも特徴だ。

オンライン説明会やバーチャル企業見学会など就職支援を実施している県産業支援センターの担当者は「オンラインは移動時間の制約がなく、幅広い層とやりとり出来る一方で、企業側は最後は対面で採用を決めたいとの声も多い」と指摘。その上で「オンラインと対面をうまく組み合わせた『ハイブリッド方式』が定着するのでは」と話している。