<まる見えリポート>県立大学新設 コロナ禍で展望開ける 松阪市長が要望

【「1対1対談」の鈴木知事(左)と竹上市長=8月29日、松阪市内で】

8月29日の竹上真人松阪市長と鈴木英敬知事の「一対一対談」で、竹上市長が県立大学の新設を求めたところ、鈴木知事は新型コロナウイルス禍を東京一極集中是正の好機と捉えて「新設の可否をしっかり検討していきたい」と表明した。昨年度の県内の、大学進学者に対する大学定員の割合は39・6%で、全国最下位レベル。人口減少対策で公立大学が若者の引き止め役として期待されている。

一対一対談で竹上市長は、コロナ対策と一極集中是正に絡め、「地元で学んでいけば、おのずと地元に定着してくれる。県の新たな取り組みとして県立大学をつくっていただくのはどうか。公立はすごく信頼度がある。それなりの負担を覚悟している。私の夢」と求めた。

鈴木知事は「ざくっと県内の高校生は8000人が4年制大学へ進学し、うち県内の大学は2割の1600人で、8割が県外。県内の大学定員は3200人分しかない。大学進学者収容力は長野、和歌山と並びワーストスリーに入るぐらい少ない」「魅力ある大学が県内にできることは進学の選択肢が増え、地元就職に効果が高い」と現状を説明。

続けて「コロナで東京都は5、6、7月は転出超過になって流出している。コロナが一極集中から分散へのチャンス」と指摘し、「コロナ対応と来年の国体が最優先だが、中期的視点で新設の可否についてニーズ、効果をしっかり検討していきたい」と答えた。

鈴木知事は9月17日の県議会本会議でも「感染症の影響で人々の関心が地方に向き始めているこの機会に、県立大学設置の是非の検討に着手したい」と打ち出した。
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県内の4年制大学進学者は昨年度が7859人。対して県内7大学の総定員はその39・6%の3110人で半数に満たない。進学者の8割が県外に流れた。

各都道府県の大学入学定員を大学進学者数で割った大学進学者収容力は東京都と京都府が約200%近くあり突出している。一方で50%に満たない県が存在し、特に三重、和歌山、長野の3県が落ち込み、平成27年度は三重38%、長野37%、和歌山36%だった。

ところが最下位仲間の長野県は平成30年4月、2学部の県立大学を新設した。同県が昭和25年に設置した県短期大学(長野市)を改組して4年制化し、グローバルマネジメント学部と健康発達学部を設けている。
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三重県内7大学の内訳は四日市、鈴鹿、津の3市各2校と伊勢市1校。松阪市には同市が誘致して昭和57年に開校した三重中京大学(当初は松阪大学)があったが、定員割れが続き平成25年に閉校した。

少子化で大学の運営は厳しく、新規参入のハードルは高い。平成10年に開設した皇學館大学の社会福祉学部も学生を確保できず10年余りで名張市から撤退した。

竹上市長は平成27年10月の市長選で大学誘致を公約に掲げ初当選した。だが、同28年6月に県が公表した全国の私立大学を対象にした県内立地可能性アンケートの調査結果では、県内への立地を検討している大学はなかった。

大学誘致の再起動を期して同市は今年度、大学誘致基礎調査を実施。県内外の高校生3000人を対象に「どんな大学があったら松阪市に残る(来る)か?」をアンケートし集計している。

竹上市長は全国でフルマラソンを実施していない残り2県になっている点に着目して松阪市でのフルマラソン大会開催に名乗りを上げ、「みえ松阪マラソン」を実現した。今度は全国最下位レベルの大学進学者収容力に目を付けた。

第1回マラソン大会はコロナのため来月開催を中止に追い込まれたが、大学誘致はコロナのおかげでにわかに展望が開けた。