2020年10月15日(木)

▼なぜ今なのか―というのは、行政が唐突に施策変更を強行した時に定番の国民の疑問である。県は長年、伊賀地域の河川漁協だけに支払ってきた工事の立ち会いに伴う報償費を年度内に打ち切る方針を固めた

▼県議会で、県土整備部の真弓明光理事が「いきなり廃止ではなく、十分に関係者と意見交換をしたい」と議会答弁したのが2週間前。「十分」な意見交換ができたか。「立ち会いの積み重ねで河川環境保全のノウハウは積み上げられた」「一定の役割を終えた」への急変である

▼この間、鈴木英敬知事が廃止しない理由を「精査させている」と述べ、令和元年度までの5年間で約470万円に上っていたことが明らかになった。早急にフタをしなければならない都合が出てきたということか

▼報償費支払い開始時期は支払い総額ともども「文書が存在しない」と明らかにしない。なぜ伊賀地域の河川漁協だけに、との疑問の方は、平成16年の伊賀市発足前の旧上野市の議会が採択した請願「環境保全と内水面漁協の共存」を持ち出す。一緒にされた特別天然記念物のオオサンショウウオも苦笑していよう

▼立ち会い要請は「地域の河川に合った適正な工法などを採用するため、魚類の生息環境に精通した内水面漁協から助言をもらう必要がある」。文句のつけようがない見事な理由だ。惜しむらくは検証できないことか

▼「文書」やデータは出さず、その場限りの理屈だけを巧みに編み出し、修正もする。証拠の残らぬ草刈りを裏金作りの名目にしていた30年前と、県職員の巧知はそう変わっていない気がする。