<まる見えリポート>多気町の大規模リゾート施設 ヴィソン来春開業へ

【勢和多気ジャンクション近くで建設が進むヴィソン=多気町前村で】

三重県多気町前村の伊勢、紀勢両自動車道が交わる勢和多気ジャンクション近くで大規模リゾート施設「VISON(ヴィソン)」の建設が進んでいる。東京ディズニーランド2個分約115ヘクタールの敷地にホテルが建ち、約50店舗が出店する滞在型複合商業施設となる。開業予定時期は当初の今春が今秋へ、そして来春にずれ込んだが、思いがけず新型コロナウイルス禍を回避する形になった。久保行央町長は「(結果的に)良かった」と胸をなで下ろしている。(松阪紀勢総局長・奥山隆也)

同施設は「アクアイグニス多気」から「ヴィソン」に改名。同町が6年前に誘致し、菰野町で複合温泉施設を経営するアクアイグニスとロート製薬、イオンタウン、ファーストブラザーズの4社でつくる合同会社「三重故郷創生プロジェクト」が事業主体となっている。

勢和多気インターチェンジ近くに立地し、高速道路を走っていると建設中のホテル棟などが見える。全国で初めて高速道から施設内へ直結する「スマートインターチェンジ」を設け、伊勢方面から行くと一般道路を走らず到着する。

食と健康をテーマに掲げ、産直市場やレストラン街、薬草温浴施設などを造る。宿泊部屋数はホテル154室、1階が店舗で2階が宿泊施設の旅籠46室、露天風呂併設のヴィラ8棟で計208室を予定。

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アクアイグニスの立花哲也社長は同町商工会の新春賀詞交歓会で講演し、①地元農海産物をブランド化して近くで高く売る②転出人口を取り戻す③観光の連携―を事業の3本柱に挙げ、「中南勢が元気になっていくきっかけにしたい」と抱負を述べた。

約1000人の雇用を見込み、同町はヴィソンに特化した地方版ハローワークを開設している。

ところがコロナが大流行。ヴィソンはまさにコロナ直撃業種の宿泊観光・飲食小売業。同町議会6月定例会ではコロナが及ぼすヴィソンの建設工事や開業に向けた採用への影響がただされた。

町当局は「コロナ禍の影響もなく、造成工事とホテルなどの建築工事も順調に進んでいる」と説明。「正式な開業の発表のタイミングで各出展者の採用スケジュールも見えてくる。その時期に合わせて多気町版ハローワークの求人情報に反映していきたい」と答えた。

開業時期は6月28日の関係者向け現地視察会で、計画変更のため施設の完成が来年3月になり、今秋としていた予定は来春にずれ込むと明らかにされた。

久保町長は「今年開業なら即ダウンだった」とほっとしている。

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その現地視察は、ヴィソンを拠点に広域で最先端技術を活用するスーパーシティ国家戦略特区へ向けた勉強会として実施した。県と県内外20市町、33社の約180人が参加した。

キャッシュレス化をはじめ、中部国際空港からの空飛ぶクルマ、ドローンを使った志摩市からの海産物の空輸、和歌山県那智勝浦町と結んだマグロと観光客の貨客混載などを企画している。

講師の元地方創生・規制改革担当大臣の片山さつき参院議員は「まるっと全体が規制緩和できる地域にしたい」「若者が減っていく国で普通にやっていたら労働力不足でやっていけない」と訴えるとともに、「『新しい生活様式』を確立するための『コロナテック・スーパーシティ』の実現」にも目配り。

「特に観光地においては新型コロナ感染症を機に観光客が激減」「非接触を徹底することにより、住民だけでなく観光客にとっても安心安全な観光地を早期に実現することを目指す」として自動走行車やドローン、分散型エネルギーの規制緩和を挙げた。

コロナ禍の収束は今のところ見通せない。感染拡大を防ぐ外出自粛が続き、旅行や外食の回復が不透明な中、コロナと関連させたスーパーシティ構想が、特区実現の理屈付けを超えて活路になるか注目される。