大観小観 2020年8月7日(金)

▼三重大医学部の学生らに県内初のクラスター(感染者集団)が発生したことで「困ったもの。こういう学生が医者になり、県内の医療を担うのか」と、知人がメールをよこした。自身は県内医療機関勤務

▼本紙3日付けの第1報は「三重大に通う津市の10代男子学生」1人とあるだけ。まさか医学部ではという思いが頭をかすめはしたが、翌日には「三重大医学部の医学科や看護学科の学生」と明記され9人。クラスターと認定され、24人と最多更新した6日付けでは、うち7人が医学部学生。計17人に達した。先のメール送信者の憂いを改めて実感した

▼当初の「まさか」という思いには、医学部なのではないかという予感の働きがある。昭和62年に発生した三重大医学部付属病院の劇症肝炎事件がよみがえったからである。医師2人が死亡し重症の看護師1人が一命を取り留めた。全国的にもまれな大事件だったが、なぜ3人が一度に劇症化したかがなぞだった

▼B型肝炎患者から感染し、劇症化したのは確かだが、3人一度は初で、感染経路が分からない。大学病院側は会見で注射針を手袋をせずに扱って手に刺したのではなどと首をかしげる説明をし、院内取材を禁止した。感染経路は今も闇の中で、十分な再発防止がされたのかどうか

▼その不安が、ほかならぬ医学部学生が、県外などで集団で行動し、あえなくクラスターを引き起こしたことと結びつく。死亡したのは研修医と研修を終えたばかりの医師2人。どうしてそうなったか、分からぬまま死に至った形跡がある。年齢的に学生たちと差はない。