2020年5月18日(月)

▼他県ナンバーの車が蹴られたり所有者が怒鳴られたりする相談が熊野市で寄せられている。徳島県で話題になって約1カ月、全国各地に伝搬しているが、県にも伝わってきた

▼徳島のケースでは、飯泉嘉門知事が4月21日、「感染リスクの高い地域との往来は危険」として県外ナンバー調査を表明。観光施設などで職員が双眼鏡で目視調査を始めたことから中傷、投石、あおり運転が続出。「強いメッセージとなりすぎた」と同24日、知事が軌道修正したが沈静化しなかった

▼同県三好市は「徳島県内在住者です」の画像をホームページに掲示し、画像は1日で削除したが、ダウンロードして車に貼る自衛の動きは増え、県も実態調査をその後も継続。独自に来店車を調査するパチンコ店も現れて県外ナンバーを断り、飯泉知事から「良い例を示していただいた」と歓迎されている

▼昭和21年、映画監督伊丹万作が雑誌に掲載した「戦争責任者の問題」で、戦争中に日常生活の隅々に目を光らせ、自分らを圧迫したのは政府ではなく、末端の小役人や隣組長、町会長、同胞らと書いている。コロナ禍を〝戦争〟と見立てる似たような状況の中で、似たような現象が起きているということなのだろう

▼鈴木英敬知事が「県内感染者の大半が県外での感染、または県外からの持ち込み。特に県外との往来を回避する必要がある」と強いメッセージを出したのは4月23日。感染急増期で危機感を募らせたか。この17日、東海3県の移動自粛継続を呼びかけた。他県ナンバーを攻撃する土壌形成は県も例外ではない。