2020年5月17日(日)

▼桑名市の残土処理業者が愛知県弥富市の会社員所有地に建設残土を不法投棄したとして撤去などを求められた訴訟で、津地裁四日市支部が原告側主張を全面的に認めた。約5100平方㍍の敷地に約10㍍積み上げたという。「残土処理場が少ないため、悪質な業者が暗躍」と原告代理人。いつか来た道を想起する

▼不法投棄期間は平成29年9月―30年6月ごろ。同30年9月県議会の残土条例制定を求める請願審査で「県内全域において残土の処理などに関して直ちに条例制定による新たな規制が必要な状況ではないと考えている」と回答した県の認識がいかに不作為か、改めて思い知る

▼議会の請願は伊賀の住民が27年に提出。尾鷲市や紀北町に地元業者が港から陸揚げするようになったのは24年ごろから。鈴木英敬知事がひと目見て条例制定に方向転換した量である

▼知事の方針転換以降、県幹部は既存法規の不備と条例の必要性で口をそろえた。どこを見て行政を執行しているか、首をかしげる豹変(ひょうへん)ぶりだった。「建設残土」と言えば耳新しく聞こえるが、要は産業廃棄物である

▼四日市市の大矢知地区の全国最大規模の不法投棄や毒性の高い産廃を県のリサイクル商品として認定したフェロシルト事件など、失政の教訓に県は事欠かない産廃問題である。大企業が背後に存在し、零細な産廃業者が利潤に引かれて無理を重ねる構図も変わらない

▼紀北地区は首都圏の開発残土で、弥富市のケースは市役所建設を請け負った建設大手が排出した。土砂条例制定で根本は何も一件落着していないことを物語る。