<まる見えリポート>延期のパラ、出場目指す県内選手 自宅練習にはもどかしさも

【自宅の駐車場で練習に励む恩田選手=鈴鹿市で(恩田選手提供)】

新型コロナウイルス感染拡大を受け、今夏に予定されていた東京五輪・パラリンピックが延期され、来夏に開催されることになった。来年8月24日開幕の東京パラリンピックでは、すでに三重県内からは鈴鹿市出身の伊藤智也選手(56)と、津市出身の前川楓選手(22)の2人が、陸上競技での出場が内定している。国内外では代表を決める大会が相次いで中止や延期となり、選考が不透明の状態や練習環境が不安な中で、パラリンピック出場を目指し、選手たちは練習を続けている。

車いすフェンシングで出場を目指す鈴鹿市在住の恩田竜二選手(44)=三交不動産=。働いていた自動車部品製造会社で荷物を運搬中に転倒し脊髄を損傷する大けがを負い、下半身が不自由になったが、妻の美和さん(44)の紹介がきっかけで5年前から車いすフェンシングに取り組んできた。パラリンピックの延期について、初めこそ戸惑ったというが「1年練習期間ができた。世界のトップ選手と差を縮めるチャンスをもらえた」と前向きに受け止めている。

障害の重いカテゴリーBで、上半身の突きと斬る動作が加わった「サーブル」と、胴体を突く「フルーレ」の計2種目での世界ランキングで8位につけ、アジア枠での出場が濃厚だったが、アジア選手権などが相次いで中止となり、今後の選考は不透明のままだ。

日ごろは練習拠点の京都と香川へ遠征していたが、ウイルスの感染拡大の影響で外出を自粛し、今は自宅の駐車場でマネキンを相手に練習をする日々だ。臨機応変に対応できるように、腹筋や背筋の強化にも取り組む。練習量が減り、試合形式の練習ができないため「練習の成果が分からない」ともどかしさや焦りも感じている。

「周りの支えがあって競技に打ち込めている」と、所属する三交不動産や食事面などで支えてくれる美和さんへの感謝の気持ちを口にする。「延期は金メダルを取るための目標がもらえた期間と思い、いつ試合があっても万全の状態で臨めるようにしたい」と前を見据えた。

運動機能障害「S7クラス」の100メートル背泳ぎで、パラリンピック出場を目指している紀北町職員の細川宏史選手(48)は、1年延期になったことについて「練習する時間ができて良かった」と前向きに捉えている。

小学校低学年の時に水泳を始め、尾鷲高校3年の時には、当時の県記録を樹立。21歳の時に同乗中の交通事故に巻き込まれ下半身が不自由になった。リハビリのため23歳のころに水泳を再開し、ジャパンパラリンピックで優勝。シドニー、アテネと2大会連続でパラリンピックに出場した。

日本身体障がい者水泳連盟は、3月に予定していた日本代表推薦選手を決める選考会を、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けて中止とした。今後の選考会は調整中としている。

細川選手がパラリンピックに出場するには、まずは1分19秒台の記録を突破しなければならない。現在、自己ベストが1分22秒56。選考会が来年3月に開かれると想定し「今年の11、12月ごろまでには1分19秒を切れるように泳げるようにしないといけない」と闘志を燃やす。

本来は母校の町立潮南中学校(同町相賀)のプールや、町内のトレーニング施設を拠点に練習に取り組んでいるが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、施設が相次いで閉まった。

細川選手は「今は体調管理が一番。自宅での筋トレなど、日々できることを一生懸命取り組みたい」と話している。