<まる見えリポート>県、新型ウイルスで緊急対策 経済への影響懸念

【知事や県経済界の関係者らが参加した緊急経済会合=三重県庁講堂で】

世界中で新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない。三重県内でも1月時点で1人だった感染者数が今月に入り増加し、22日現在で計9人が確認された。目下、感染拡大防止が最優先課題だが、人やモノの活動制限により、観光・宿泊業をはじめ県内経済への打撃も顕著に表れ始めている。鈴木英敬知事はこの事態を「リーマンショックを上回るレベル」と位置づけ、事業者の資金繰り支援などを盛り込んだ11億円規模の緊急経済対策をまとめた。各金融機関に対し「異例中の異例」(県幹部)という知事名での協力要請も行い、影響回避へ動きを強める。とはいえ、終息の見通しがつかない中、「出口が見えず、身動きがとれない」(小売業者)となお先行きに不安を抱える事業者も多い。

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「先月末の休校一斉要請から、一気に動いた」と鳥羽市の旅館関係者。直後の数日間で、3月の宿泊予約キャンセルが殺到し、売り上げにして約5千万円が消失した。3月は8月に次ぐかき入れ時。さらに「4月は全く動かない状況」と予約はほぼゼロで、約8割の売り上げ減を見越す。「2、3カ月ならなんとか耐えられるが、それ以上となると相当厳しい」と頭を抱える。

県内観光の中心地、伊勢志摩では観光施設やイベントの一時休止や外出自粛などの影響で観光客が激減。志摩市観光協会では、2月の市内の宿泊施設の予約キャンセル数を約2万4千人と推定する。志摩市の小売業者は「観光・宿泊業の関連業者は多岐にわたる。負の連鎖が心配だ」と話す。

百五経済研究所によると、県内景況調査の全22業種のうち、今年度下期実績見込み、来年度上期見通しとも唯一プラスだったのが観光・宿泊業という。そんな好調だった業界だけに、「相当打撃を受けるのではないか」とする。

ただ、明るい兆しも見えている。前出の旅館関係者は、夕食を部屋食、朝食はバイキング形式を変更するなど宿泊客が他者と接触するのを極力避けてもらうよう工夫した結果、「部屋食プランを見てきた」という客が入り始めたという。また、別の関係者によるとバイクのツーリング客も急増。志摩市観光協会の担当者は「足元の危機を乗り越えたあかつきには反転攻勢に打って出られるよう体制を整えたい」とする。

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「事業者の悲鳴に似た声が伝わっている。返済、貸し付け変更など事業者の立場で立ち、柔軟にやってもらいたい。ここにいるトップの人だけでなく、現場のすみずみまで行き渡らせて欲しい」。11日に開かれた緊急経済会合で、鈴木知事は参加した経済団体や金融機関の代表に訴えた。

緊急経済対策では、県信用保証協会とタッグを組んだ県融資制度を「一丁目一番地」(県幹部)と捉え、リーマンショック時を上回る県負担で、資金繰り悪化にあえぐ事業者を下支えする。

県信用保証協会によると、新型肺炎対策で今月上旬に始まった融資制度の申し込みは現在67件、約21億円。全業種に適用されるため、当初は観光・宿泊業が多かったが、徐々に小売り業や建設・建築業なども増加し、影響は多くの業種に広がっていると見る。

今回は事業者に資金を貸し出す金融機関に対し、知事名で要請事項を行ったのも特徴。監督官庁でない県知事が金融機関に直接要請するのは初という。リーマンショック時などに貸し渋りや貸しはがしが問題化したこともあり、事業者への円滑な融資を促すのが狙いとしている。