2020年3月17日(火)

▼「福井県の〝じいさん〟が、原発に絡んで関電の役員たちに1億円を超す資金を送った」という一記者からの報告が、福井県高浜町の元助役から関西電力幹部に原発マネーが流れていることをスクープした共同通信取材班が業界紙や月刊誌に書いている取材の端緒である。昨年4月某日。東京・汐留の同社ビル内での一コマだ

▼関電本社のある共同通信大阪支社でなかったのはたまたまだろうが、個人的には妙に納得させられた。昔東京の経済雑誌にいたころ、関西経済界の不祥事を書いてくれるライターを探すのに苦労したことが思い出されたのだ。新聞記者など日ごろ懇意のルートがことごとく断られた。少数の大企業が業界を牛耳り、記事は詳細にチェックされて著者が突き止められ、以来取材ができなくなるという話だった

▼関西電力も間違いなくその一つで、天皇といわれた芦原義重(故人)の失脚なども謎の多い事件だった。北陸電力、中部電力、関西電力の3社で進めた珠洲原子力発電所(石川県珠洲市)を取材したことがある。中電が市中央部、関電が能登半島先端部でそれぞれ建設を計画したが、関電の用地担当者には会えず、代わって精緻な図面を元に地元合意に精力的に動いていたのは地元の漁師グループだった

▼元助役も高浜原発で、そんな一人だったに違いない。珠洲原発は大がかりな不正選挙をきっかけに頓挫する。関電の企業風土が必然的に招いた結果である気がしてならない。便宜供与が第三者委で認定され、改革が迫られているが、同社の企業風土というものをちょっと考えてみたくなる。