2020年3月12日(木)

▼前例踏襲や十年一日といえばお役所仕事の代名詞だが、県防災対策推進条例改正案で、障害者や高齢者などが個人情報を提供するのは従前通り努力義務にしたことについて、県議会常任委で「誰一人取り残さないことにはならないのではないか」と問われ、防災対策部が「個人情報と要配慮者支援のせめぎ合い。バランスが難しい」と理解を求めた

▼何の理解か。一人取り残すのはやむを得ないことに「ご理解を」という意味か。重大災害・事故の際の個人情報の保護と公開の基準は個人情報保護法成立以前から論議されてきた。本人の同意がない場合原則公開禁止だった同法は「本人の同意を得るための作業を行うことが著しく不合理である場合」の例外が追加され、その範囲は拡大されつつある

▼県も、一昨年のはしか騒動で公表内規が見直され、新型コロナウイルスの拡大で、災害時の行方不明者や死者などの公表指針を発表。さらに検討することにしている。そんな経緯など関係ないがごとくの防災対策推進条例改正案の現行条例踏襲である

▼要配慮者の努力義務は事前の個人情報提供に対してで、災害時の行方不明者や死者などとは違いはある。しかし、死者、行方不明者などの犠牲者は、圧倒的に要配慮者が多いとされている。平成21年制定の条例が踏襲されていいはずはない

▼個人情報とのバランスが難しいからそのまま据え置いたのか。事前提供の努力義務は従前通りだが、代わりに別の方法で迅速な救済を可能にしたのか。要は、一人も取り残さないための効果的な対策を組み入れたのかどうかである。