<1年を振り返って>松阪市長選で現職再選 圧勝でも投票率戦後最低

任期満了に伴う松阪市長選は9月8日、投開票され、現職の竹上真人氏(57)が一騎打ちで新人候補を下し、再選を果たした。ダブルスコアの圧勝だったが、投票率は38・28%にとどまり、旧市を含め市政史上最低だった。

竹上氏は3万5791票を獲得し、相手の塾経営、海住さつき氏(54)の1万5049票の2倍以上で引き離した。

当選した竹上氏は「1期4年間の評価をしていただいた選挙。立派な成績を感謝します」とあいさつし、夫妻で万歳した。

公約は初当選時が「子育て一番宣言!」。今回は「継続+(プラス)進化!」を掲げた。

公約に沿って待機児童ゼロを目指し、私立保育園の新設や増改築を支援。老朽化した公立保育園を移転新築した。保育定員は市長就任時から440人増えた。

だが、保育園の待機児童数は昨年10月1日で71人に上った。今年10月1日からの幼保無償化などもあり、同日から募集を始めた来年度の保育園と幼稚園の申し込みは同9日で前年同期比110人増の734人。保育園へ大量に入園希望が殺到すると待機児童が出る恐れがある。

一方、ふるさと納税寄付金は、松阪牛を中心に返礼品を増やし、申込サイトも拡充。昨年度は前年度比約2・5倍の6億7380万円に達した。目標にしていた6億円を超え、県内1位となった。2位は桑名市の2億7702万円。今年度の目標額は10億円に設定している。

また、県内唯一となるフルマラソンの開催を打ち出し、来年12月20日に「みえ松阪マラソン」を開く。ゴール地点となる市総合運動公園には今年4月、県初となる公共スケートパークをオープンさせ、連日にぎわっている。

1期目公約の「新たなスポーツ施設を整備します」は、2期目公約では「スポーツと連動したまちづくり」に「進化」している。

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前市政では、山中光茂前市長が2期目半ばで市議会と対立して突然、辞職を表明した。辞めると言いながら居座り続け、支持者らの市議会解散請求(リコール)の不成立が判明するまで半年以上にわたり辞表の提出を見送り、市政運営を混乱させた。

山中氏の後継候補を破って竹上氏が初当選し、山中市政を特徴付けた市議会や近隣市町との対決構図は収まった。長期課題の若者の定住や雇用創出など少子高齢化対策を進める基盤ができた。

竹上市長は、転出超過が続く同市以南の全市町を訪れ、若い世代の地元就職に向け連携を呼び掛けた。今年2月に16市町で南三重地域就労対策協議会を設立し、会長に就いた。地域内の企業の就職情報を提供するなど、「若者を地元に残す」「就職時にUターンさせる」取り組みを始めた。

企業立地は、スペインの自動車向けプレス部品世界最大手「ゲスタンプ・オートモシオン」が昨年10月に進出。同年度は12件立地し、目標を達成している。

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ただ、市長選の投票率は三つどもえの前回に比べ14・37ポイント減の38・28%で戦後最低に落ち込んだ。竹上氏の得票率は70・39%に上るが、有権者に占める絶対得票率は26・70%と由々しき数字。

平成17年の1市4町の合併後、普通交付税は特例で10年間、旧市町が存続した場合の合計額を下回らないように算定され、続く5年間、段階的に減額されてきた。来年度は新市本来の交付額となる。

厳しい財政の下、広く市民の参加を得ながら市政を運営する手腕が問われる2期目となる。