<まる見えリポート>監護者性交罪あす判決 被告、否認に転じ無罪主張

【義理の娘に対する監護者性交の罪に問われた義父の判決公判が開かれる津地裁=津市中央で】

義理の娘=当時14歳=と性交したとして、監護者性交の罪に問われた県内に住む義父(45)の判決公判が17日、津地裁で開かれる。義父は捜査段階では娘と性交したことを認めたが、公判では「性交はしていない」と否認に転じ、無罪を主張。検察側は「供述が不自然に変遷し、反省の態度は皆無」と指摘し、懲役八年を求刑した。義父と娘の供述の信ぴょう性が争点となっている。平成29年の刑法改正で監護者性交罪が新設されて以降、津地裁本庁で同罪に問われた被告への判決言い渡しは初めて。地裁の判断に注目が集まる。

論告などによると、義父は娘が小学4、5年の頃から同居するようになった。性的虐待は娘が小学6年の頃から始まり、約3年間続いたとされる。義父は娘に口止めし、娘は母らに言い出せなかった。今年2月、娘が母や学校に打ち明けて発覚。県警は3月、義父を監護者性交の疑いで逮捕した。

起訴状などによると、義父は今年1月上旬から2月上旬ごろの間に、県内の自宅で、同居する娘が18歳未満であると知りながら親としての影響力に乗じて性交したとされる。義父は妻(義理の娘の母)らとも同居していたが、妻らは仕事などで留守にしており、自宅にいたのは義父と娘の2人だけだった。

義父は公判で娘へのわいせつ行為を認めたが、性交については否認。わいせつ行為の時期は、公訴事実の1月上旬から2月上旬以前だったとし、無罪を主張している。

検察側は論告で、娘が母らに被害を申告した際の供述は、羞恥心が害される性犯罪の性質を考慮すれば「十分に具体的で信用できる」と強調。一方、義父については「罪を免れるために否認したが、裁判官の心証を害することを懸念し、わいせつ行為の一部は認めて反省しているよう述べた」と主張した。

弁護側は最終弁論で「娘の供述には具体性がなく(性交の)時期が曖昧」と指摘。義父が当初、娘との性交を認めていたことについては「性交を広い意味で捉え(わいせつ行為が性交に含まれると)思い違いをしていた」と述べた。

29年の刑法改正で新設された監護者性交罪は、親などの監護者が支配的な立場を利用して18歳未満の人と性交した場合、暴行や脅迫がなくとも罪に問える。子どもらにとって、性的虐待は暴行や脅迫がなくても拒否することが難しいからだ。改正以前、監護者の性犯罪は暴行や脅迫がなければ児童福祉法違反などでしか罪を問えなかった。

津地裁では17日、監護者性交罪の判決公判に先立ち、実の娘=当時13歳=の胸を触ったなどとして、監護者わいせつの罪に問われた男(45)の判決公判があり、24日には別の監護者性交罪に問われた男(45)の判決公判が予定されている。いずれも起訴内容を認めており、量刑や猶予刑となるかが争われている。

児童虐待に詳しい愛知県立大看護学部の下園美保子講師(地域保健学)は「今後、監護者性交罪を問う裁判は増えるだろう。ただ、それらは氷山の一角。家庭という密室での性犯罪は外部に漏れにくいので、裏にはまだまだ埋もれている声がある」と指摘する。