2019年10月17日(木)

▼イヌが人をかんでもニュースにならない、人がイヌをかめばニュース、というのは古典的なニュース価値の基準。豚コレラに感染している野生イノシシが見つかり感染は計19頭と報じる本紙記事の扱いは一段。全頭ワクチンが秒読みの中でイノシシへの関心が薄くなるのは人の世というものだろう

▼目撃情報からの推計でイノシシの生息密度が高いのは伊賀地域で、鈴鹿山脈から大台山系だが、農産物などへの被害が大きいのは志摩地域。感染イノシシが北勢に集中しているのが不思議だが、県の2千頭捕獲も北勢限定なのは、豚コレラ対策の一環である

▼一方で、今年の志摩地域のイノシシ被害は多かった。民家への侵入も顕著で、生け垣の植え込みや花壇などがごっそり掘り起こされる。今年は場所を問わず多いと通報を受けた市役所が、おりを仕掛けてはいるが効果は限定的。フェンスなどで自ら備えを、と逆に対策を求められたと市民が憮然としていた

▼県もイノシシといえば豚コレラ対策で手いっぱい。獣害対策はとてもとてもということだろう。豚コレラ対策チームや本部などの新設で、あちこちから人材を集めているに違いない

▼志摩市が太陽光など再生エネルギー開発の抑制条例を制定したのは2年前。景観損壊が強調されたが、山林伐採など災害の危険性も指摘している。計画を含め開発地域は約88万平方メートルにおよび、実施は進んでいる

▼山を追われたイノシシが民家に出没するのは自然の理。大規模災害にも通じる人災である。太陽光の旗を振りまくった県も、知らん顔を決め込まざるを得ないか。