2019年8月23日(金)

▼柔道の投げ技、大外刈りは小中学生には禁止すべきと全日本柔道連盟(全柔連)を訴えた同技で死亡した中1女子生徒の父親は、危険を認めつつ「禁止義務」は棄却した福岡地裁判決に控訴しなかった。「事故を起こさないためにどうすべきか、関係者に考えてほしかった」という目的は達成されたとコメントしている。口惜しさと諦めが交差している気がした

▼判決は「受け身の指導の徹底と、習熟度に応じた技の制限、禁止をすることで重大事故は防げる」と断じた。全柔連のA級指導員が監督している中で起きた事故である。事前に相手に技を伝えて投げる練習中だった―。それらを判事はどう考えたか。畳水練の趣がある

▼部活動を始めてから1カ月の女子生徒に大外刈りを受けさせたというのに驚く。柔道部に所属した中1のころ、3カ月間は受け身ばかりだった。「あごを引け」と徹底され、投げられて覚える受け身でも、あごを引くことが一番。技は背負い投げだったが、中学生は体格差が激しく、先輩の技は2階から落とされる感がじた

▼宙に浮く間もなく背中からたたきつけられる大外刈りは危険で、受け身の練習に適切でないことは言うまでもない。技の練習なら、受け手は熟練者に限定すべきで、小中学生の学校体育からは逸脱した技だ

▼バトミントンの世界ランク1位、山口茜選手が世界選手権で初戦敗退。けがが原因で、けがのない一流選手はいないといわれる。東京オリ・パラ大会を前に、世は上げてスポーツ根性物語一色。何のためのスポーツか、裁判所ぐらいは冷静な判断をしてもらいたい。