2019年8月6日(火)

▼一難去ってまた一難―。紀北町上里地区の小型木質バイオマス発電事業計画に反対している住民には、そんな思いがあるのではないか。建設残土問題に無理解だった県がようやく規制条例を制定することになったばかりというのに、再び不安の伴う事業計画が浮上したのだ

▼「反対するならば明確な根拠を示してほしい」と事業者側は言ったらしい。自然エネルギーに位置づけられている発電事業に反対しにくいのは太陽光発電や風力発電事業を見ても分かる。自然・生活環境へ重大な問題があると住民が気づいたのは国の奨励から一年以上経ていた

▼紀北町の事業は昨年11月に経済産業省に計画書が提出され、今年3月と6月に住民説明会が開かれた。木質バイオマス発電という専門的な事業に対し、賛成にしろ反対にしろ、住民が「明確な根拠」を持つ十分な時間と言えるかどうか。同省は住民説明会などで「地域住民との適切なコミュニケーション」を指導している。住民が納得できる「明確な根拠」を示すのは事業者側ではないのか

▼事業はまた、六価クロムなど有害物質を含む汚染土壌処理施設計画が持ち上がり、町をあげての反対で撤退させた施設を使うという。住民の不安や感情を逆なでしないようより丁寧な説明が求められているともいえよう

▼町当局は「法に基づいている。町として動くことは難しい」。法では不備だと残土条例を県に求めた町とは思えないが、後追いの水資源条例で産廃訴訟を20年戦って敗れナマスを吹くか。四日市公害を持ち出すまでもなく、新しい事業に法は常に後追いである。