<参院選みえ・攻防の裏側> 今回が「最後のご奉仕」 水谷隆・元県議

【候補者に拍手を送る水谷元県議=菰野町福村で】

「水谷さんに聞いて」。自民党県連幹部が口を揃えていう言葉だ。自民候補、吉川有美の陣営では元県議の水谷隆(72)が選対本部長代理を務め、徹底した“情報統制“を敷く。

きっかけは大手週刊誌に記事が掲載されたことだった。公示日の4日、吉川陣営に激震が走った。選対の崩壊を思わせる記事が週刊誌に掲載。選対本部長の三ツ矢憲生は「公示日にああいう記事を出されるのは困る」と苦言を呈した。

吉川陣営のお家事情を知る人間は限られる。「誰がしゃべったのか」。水谷はすぐに地元記者や県議らへの“事情聴取”に取りかかり、犯人捜しを行った。

情報漏れへの対応は早かった。問い合わせ窓口を自らに一元化し、県連関係者が個別に情報を流すことをけん制。翌週に別の大手週刊誌に掲載された記事には、県連関係者から情報が漏れた形跡は一切見当たらなかった。

水谷は平成15年の県議選で初当選して以来、県議を4期務め、県議会副議長や党県連幹事長などの要職を歴任。今年4月29日の任期満了を区切りに県議を引退し、いなべ市・員弁郡の議席を若手に譲った。

今回、選対本部長代理となったのは県議を引退した身軽さだけではない。キャリアの長さやリーダーシップの高さから引退後もなお他の県議に影響力を持ち、県内選出の衆院議員川崎二郎ら国会議員からの信頼も厚い。4月の知事選でも鈴木英敬の選対副本部長を務め、手腕を発揮した。

そんな水谷にとっても、今回は難しい役回り。公示前、動きが鈍い陣営に県連幹部が「たとえ気が進まなくても、民進系に議席を奪われるわけにはいかない」とたしなめたほど、士気は低迷していた。

そこで陣営に発破をかけるべく、大物を呼ぶ空中戦を展開する。安倍晋三首相や菅義偉官房長官らが次々と来県した。安倍首相が同じ選挙区内を1日に4カ所も巡るのは「異例なこと」(県連幹部)という。

水谷自ら「最後のご奉公」と位置づける今回の参院選。6年前も吉川を推した水谷に対し、県連幹部からは「製造者責任を果たしてもらわないと」と厳しい意見が出る。水谷にとっても審判の日は近づいてる。

(敬称略)

◇    ◇

現新三つどもえの戦いとなった参院選三重選挙区(改選数1)。投開票を控える中で、議席獲得を目指して奮闘する各陣営の“キーパーソン”を中心に激戦の側面を追った。