2019年6月21日(金)

▼救急車の出動といえば、かつては医療機関のたらい回しが県の社会問題だった。総務省消防庁の昨年の救急車出動件数速報値によると、県は出動件数、搬送人員ともに過去最高で、増加率は全国トップだった

▼初めてではない。県のホームページは目次を見つけてもクリックすると「ドキュメントが見つかりません」と表示されることが多く、「消防行政」もその一つだが、目次には「平成24、25年に2年続けて全国1位の増加率」とある

▼「26年から減少…」で目次の表示は終わっているが、これも県のドキュメントとしては恒例の日付のない資料によると、タクシー代わりの救急車利用で16年以降、現場到着時間が延伸傾向という。そのころだったか、医療現場改善をめざす県医師会のシンポジウムをのぞいたことがある

▼すさまじい過重労働をこなす医師の報告が相次いだが、改善を目指す中で大きな障害が救急車だという。命に向き合うのが使命だから救急車には誠実に対応するにしても、第三次医療を担当しているのに軽症者が運び込まれてくると、本来の医療に専念できないばかりか、組織、態勢が構築できないという

▼地域の開業医や2次医療機関との連携で救急車のさばきが極めてうまくいっていると報告していたのが伊勢赤十字病院だった。カギは伊勢市の対応という。1次、2次、3次医療の役割を理解し、市民啓発に努める一方、搬送先を適切に判断してくれているからだと言っていた

▼たらい回しがあっては成立しない仕組みであり、県民に呼びかけるだけでは焼け石に水に違いない。