2019年4月29日(月)

▼故橋本龍太郎通産相(当時)が米通商代表部代表から、のど元に竹刀を突きつけられている映像や写真が話題になったのは平成七年の厳しい貿易摩擦交渉の時だ

▼制裁措置をちらつかせた米国国とWTO(世界貿易機関)での紛争処理手続きに入った日本とで、日米関係は最悪の状態だったが一転、妥結に傾いたのは大リーグで活躍する野茂英雄投手の活躍といわれる

▼野茂投手の活躍は当時の大リーグの窮状を救い、クリントン大統領に「野茂は日本からの最高の輸出品」と言わせた。6月に大阪で開く20カ国・地域首脳会議の議長役として事前にトランプ大統領との関係を密にしておこうと渡米して会談に臨んだ安倍晋三首相だが、農産物を巡る貿易交渉の妥結期限を唐突に5月の訪日と切り出された

▼メラニア夫人の誕生祝いに顔を出し、昭恵夫人から手作りのお茶をプレゼントするなどの徹底した「抱きつき外交」が水泡に帰した格好。かつては「自動車に追加関税をかければ私たちの友情は終わりだ」とささやかれ、今回も直前の会合で、自分の言動が予測不能だから「よい交渉ができる」。泣く子に勝てぬ、あるいは手玉にとられている印象だ

▼5月の来日では大相撲観戦が予定されている。優勝力士へのトロフィー授与に意欲的という。大相撲にハワイ州出身力士の姿がなく、かつて「人種差別のせいで横綱になれない」という小錦の発言が日米に緊張をもたらしたこともある

▼白鵬のバンザイや三本締めなど、大相撲に今なお誤解の土壌はある。米国大統領にどれほど日本文化を理解させることができるか。