2019年3月27日(水)

▼政治用語とされる「遺憾」は本来の「思い通りにいかずに残念」のほか、多様な意味を込めることで知られる。「遺憾の意を表す」は、時に謝罪、時に非難として用いられる

▼「総合的」も、菅義偉官房長官が多用し、中央、地方を問わず政治用語としてめきめき地位を固めている。「遺憾」について、インターネット百科事典「ウィキペディア」は関連用語に「詭弁」をあげるが、こちらは決断の理由を問われた時に「総合的に判断」などと用い、関連用語はさしずめ「けむに巻く」があげられようか

▼この言葉を最も使った県の政治家は北川正恭元知事で、記者会見で視点を変えて二の矢、三の矢の質問にそのたびに「それも含めて総合的に判断(検討)」で応酬し、同元知事の信条でもある「説明責任」と表裏をなした

▼北川改革の洗礼を受けた県職員の一人、小山巧南伊勢町長が、元地域おこし協力隊員からのパワハラ訴訟の和解で「費用の増大など総合的に考慮して早期解決のため応じた」とコメントした。雇用契約の打ち切り示唆や長時間の罵倒、机を足蹴に、などの訴えである。事実無根を主張してきた決着として、何の説明責任も果たしていない

▼「総合的考慮」の例に「費用増大」「早期解決」をあげたのも、訴えの重大、深刻さに照らし、法の執行者としてあまりにさまつ。50万円を支払い「今後は職員のコンプライアンス意識向上に努めたい」ともコメントしたから、実質は和解せざるを得なかったということか

▼「総合的」は、やはり「けむに巻く」言葉で、詭弁も少々含んでいるのかもしれない。