<まる見えリポート>三重県庁は人事の季節 知事3期目の基礎固めへ

三重県庁は人事の季節を迎えた。4月に鈴木英敬知事の改選期を迎え、3選出馬表明した鈴木知事は選挙へとまっしぐらに向かうが、視界は甚だ良好。そのため来年度は知事の3期目4年間の基礎固めを行う本格的な人事となりそう。退職者予定者は7人。加えて現行部長の横滑り異動も活発に行うと見られる。県幹部人事を展望してみる。(年齢は3月末現在)

退職が予定されるのは西城昭二戦略企画部長(60)▽嶋田宜浩総務部長(60)▽田中功子ども・福祉部長(60)▽鈴木伸幸地域連携部長(60)▽岡村昌和農林水産部長(60)▽長谷川耕一病院事業庁長(60)▽村木輝行地域連携部国体・全国障害者スポーツ大会局長(61)―の7人。

西城氏後任は混戦模様。戦企部長は部の規模こそ小さいが花形ポスト。企画畑の頭脳集団の中でも「エース」と呼ばれる人物が就いてきた。そのため見通しやすいのだが、今回ぴたりとはまる人物が見当たらない。そんな危機感からか、西城氏自ら「西城塾」を開き、若手の人材育成に務めているとか。

名前が挙がるのは福永和伸防災対策部長(58)。「きれいな絵が描ける人」(元県幹部)と、品の良さやスマートさは現部長随一。「ポスト西城」と数年前から名前が浮上していたが本年度防災対策部長に就任。防災は知事の最も力の入れる政策。その部長を一年ですげ替えることの是非や、福永氏は次期教育長との噂もある。

「一見全くエースに見えないんですが、実は彼こそエースなんです」(中堅職員)と囁かれるのが村上亘雇用経済部長(59)。確かに独特のキャラに隠れがちだが、企画畑からサミット関連、そして大事業部長に就任など日の当たる道を歩いてきた。定年まであと1年が気がかりだが「エース」登板か。

井戸畑真之環境生活部長(59)の名も挙がる。かつて県庁の頭脳と言われたその能力以上に、同部長が「腰かけ」ポストというのがみそ。部内の難所、廃棄物対策局にはプロ局長がいるため、比較的誰でも務まると言われる。しかし同じ部長級でも局長より格上の部長を名乗れるため箔もつけやすい。そのため重要ポストの手前で仮置きされるケースが多く、可能性はある。

総務部長は紀平勉東京事務所長(58)が当確。財政担当の副部長、同所長経由で部長コースは稲垣清文副知事(63)も歩いた既定路線。ただ、柔和で人当たりの良い紀平氏が、歴代部長のような冷徹人間になりきれるか、だが「意外にねちっこいよ」(元幹部)と予算交渉で事業部長を困らせる押しの強さもあり、心配無用か。

今回の人事で最大の謎とされるのが農林水産部長。というのも、事務系の有力候補が知事ら上層部に嫌われ、コースから外された。そのため後任が見当たらず。そこで浮上しているのが技術系職員の登用。同部長ポストは技術系からも輩出していたが農業、林業、水産の縄張り争いもありまとまりにくく、長らく事務系に付け入る隙を与えてきた。

今回事務屋ルートが崩れたことで復活の芽も。技術屋筆頭は森内和夫同部次長(58)。が、平野繁紀南地域活性化局長の名が浮上。平野氏は自民党中央の超大物政治家とパイプがあり、当然鈴木知事の評価も高いとされ、大抜擢の可能性あり。

鈴木知事の来期を見通した場合、最大イベントが国体。そこを今後3年間取り仕切る国体・全国障害者スポーツ大会局長に就くのは誰か。1年定年延長した村木氏は、退職後に就く予定だった県体育協会ポストがようやく明け渡されることになり、晴れてお役御免。

後任はもともと木平芳定副教育長(58)が有力候補。が、村木氏の延長で3年務めるには木平氏の定年延長も必至。加えて県教委不祥事が相次ぎケチもついている。

退職までちょうど3年で、すぽっとはまると言われているのが辻日出夫関西事務所長(57)。元スポーツ推進局次長の経験もあり資格十分。ただ、両氏とも手堅いが派手さに欠け、知事好みかと言えば疑問符。

そこでダークホースとして浮上するのが同じく推進局次長だった高間伸夫総務部副部長(56)。馬力がある人物とされ、目玉人事として名が挙がる。しかし、総務部は部長が退職し、行政担当の日沖正人副部長(57)は昇格の最有力候補。「3人総入れ替えは人事上考えにくい。副知事が嫌がる」(部長)と無理筋か。

地域連携部長は大西宏弥同副部長(58)が有力視。元企画員で議会や市町首長に人脈豊富。次期南部地域活性化局長との声もあったが部長登用で待望論がある。

病院事業庁長には県立総合医療センターへ派遣の大橋範秀参事(58)の名が。病院行政通として知られ、サミット推進局次長も務めた。最近退路を断って直談判したと話題に。ほかに病院経験者の荒木敏之出納局長(58)の名前も上がる。

観光局長2年目で横滑り異動が確実と見られている河口瑞子氏(58)は環境生活部長か子ども・健康福祉部長か。子福部長には森靖洋副部長(57)の名前も上がる。

紀平氏の後の東京事務所長は初任部長ポストとはいえ、中央志向の強い鈴木知事の前線基地を任される重要な役割。ここで対応を誤ると左遷の憂き目に合う。有力候補は元秘書課長で知事お気に入りと評される喜多正幸県土整備部副部長(57)、「非常に優秀」(最高幹部)とのお墨付きを得る日沖副部長。

変化球も投げられることを見せるのなら、元同副所長でクセの強い中嶋中出納局副局長(57)の登用もあり。近年好き嫌いが激しくなったといわれる鈴木知事の懐の深さを見せてほしいところ。

鈴木知事の人事で最大の特色が女性幹部の積極登用。岡村順子伊賀地域防災総合事務所長(57)、福井夏美南勢志摩地域活性化局長(58)の名前が上がる。

ただ、気になるのが部長級への登竜門で、実質部を取り仕切る副部長(庁局含む)に女性が1人もいないこと。数を増やすために一足飛びに引き上げることも重要だが、副部長に登用しないのでは所詮お飾りかと勘ぐられるのがおちだ。

昇格候補はほかに、横田浩一戦略企画副部長(57)、前田茂樹農林水産副部長(58)らの名前が挙がる。