2018年12月21日(金)

▼「SNS(交流サイト)等で他人を傷つける言動を禁じる」とは県がいじめ防止条例を策定する際に児童生徒にアンケート調査した時の意見だ。「SNSで悪口を言わない」という提案もあった

▼これを受けて、条例は、SNSの特性を踏まえたネット上のいじめ防止に対する県の責務として啓発、監視、体制整備をうたう。が、8月に自殺した県立高1年の男子生徒は、遺族の連絡で、無料通信アプリ「LINE(ライン)」にいじめを疑わせる書き込みがあることを知った

▼「重大事態」と認定し、初めて第三者機関「県いじめ対策審議会」が調査に入る。10月末の調査で昨年度のいじめ認知件数が前年度比で減ったと胸を張り、数日後の本年度4―9月の認知件数は過去最多として条例制定による意識付けのためなどと説明していたが、その2カ月前に自殺者を出していた。いずれの説明も説得力が急速に薄れていく

▼昨年6月の条例策定のための検討委員会で、いじめの判断を問われ、県教委は「言葉で、行為で、受けた側がいやだと、苦痛に思ったときいじめであると法的には決まっています」と答えている。その2カ月後、県立高3年女子からいじめに適切な対応をしなかったと訴えられて「当時の対応に問題はなかった」と争うことにしている。言っていることとすることがちぐはぐだ

▼その時も、「重大事態」の認定は後追いで、いじめの中心はSNS。県教委は理屈をつけて削除などの手を打たなかった。論より証拠。今回は、認めざるを得ない状況であること。認めたくはなかったことなどが垣間見える。