2018年12月4日(火)

▼本紙『株式展望』で、岡三証券のシニアエコノミスト、嶋野徹さんが大阪での万国博覧会開催に関し「未稼働の土地の利用やカジノの集客だけとなるのはもったいない」。統合型リゾート(IR)などと言わず、ずばり「カジノ」と言い切るのが小気味いい

▼「未稼働の土地利用」とは会場予定地のことだ。「(大阪市は)ほったらかしの土地で、逆に言うと(負の遺産で)完成させない方がよかった」のが早期整備の必要が出てきたと決定後の記者会見で、松井一郎大阪府知事が市を促している

▼同知事は「圧倒的な未来を体験できる万博をつくらねばならない」。しかし、具体的には目指すのは企業の集積地であり健康医療産業の中心地(本紙3日付)。テーマの「いのち輝く未来社会のデザイン」がこぢんまりとまとまっていく

▼平成6年の世界祝祭博覧会も伊勢市が朝熊山麓、鳥羽市が小浜半島の未開発地を会場候補にし、振興の契機にしようとした。伊勢市の振興計画は画餅となり、県の支援策サンアリーナは運営不振となった

▼一時の博覧会ブームが去り開発指向、パビリオン中心の博覧会は使命を終えたと言われた。役割が見いだせないまま、祝祭博は「新たな“であい”を求めて」。愛知万博も「新しい地球創造:自然の叡智」と抽象的テーマに終始した

▼嶋野さんは大阪万博の「月の石」が人類の未来を示したように、今度は「はやぶさ2」や宇宙開発、高速・大容量の次世代通信、リニア新幹線などが生活を一変させる可能性を説く

▼「未来社会のデザイン」を提示できるタイミングという気がしてくる。