<まる見えリポート>新顔4人が乱立 町制60周年の明和町長選

任期満了(12月11日)に伴う明和町長選は11月13日告示、同18日投開票される。3期目の中井幸充町長(71)が引退し、元町課長2人と前議長、元町議の新人4人が立候補を表明している。乱立の選挙情勢と町政課題を展望する。

食道がんの摘出手術を受けた中井町長はがん再発のリスクから今期で勇退。町長選へは立候補の表明順に、いずれも元町課長の世古口哲哉氏(51)=大淀甲=と中谷英樹氏(59)=佐田=、前議長の辻井成人氏(61)=馬之上=、元町議の田辺泰宏氏(79)=新茶屋=の4人が名乗りを挙げた。

町内の団体が10月16日に開いた立候補予定者の公開討論会へは田辺氏以外の3人が出席し、町の優先課題や防災、観光をテーマに意見を戦わせた。

候補予定者のうち最年少で同町こども課長を務めた世古口氏は「働く現役世代の先頭に立つ。企業誘致をトップセールスする」「発展のかぎは子ども。人口が多くなれば税収アップにつながる」と訴えた。

同町防災企画課長として津波避難タワーの建設に携わった中谷氏は「6基のうち4基完成したが、たどり着くまでの道は迷路のようで狭く、地震でブロック塀や屋根が散乱する。避難路確保を進める」と語った。

建設会社の元社長で議長を2回経験した辻井氏は「議会で学び得たものを糧としていきたい。丁寧に話を聞いて伝え実行するサイクルを回す」「財政健全化へ聖域なき改革を進める」と主張。

町長選は3度目の挑戦となる田辺氏は出馬会見で4年前と同じく「津波避難施設と観光健康センターを兼ねた施設を全国で初めて造りたい」とアピール。建設済みタワーは「見晴らし台にすればいい」と話す。

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4人が戦う町長選は同町誕生に伴う昭和33年と、中井町長が初当選した平成18年の2回ある。

同18年は現職で4選を目指す木戸口眞澄氏に対し、木戸口後援会幹部だった東谷泰明氏と元町議会事務局長の中井氏、田辺氏が挑んだ。

町内五地区のうち有権者数が最も多い斎宮地区は木戸口、東谷両氏が出て割れる一方、大淀、上御糸、下御糸の海側3地区は候補が中井氏だけで、海側がまとまりやすい構図となった。中井氏が4738票を獲得し、次点と271票差で競り勝った。

今回は斎宮地区の候補が不在で、上御糸から中谷、辻井両氏が出馬、大淀から世古口氏が出る。大票田の斎宮、明星両地区で票を奪い合う激戦が予想される。

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同町は松阪、伊勢両市に狭まれ求心力に欠けるが、逆に両市のベッドタウンとして2万3千人を超える町に発展。県内15町の中では菰野町、東員町に次いで3番目の人口を抱える。

平成の大合併では多気郡の多気町、勢和村、度会郡の玉城町、度会町との合併協議会が解散し、多気郡内では唯一合併せず、今年、町制施行60年の節目を迎えた。

この間、昭和45年の団地造成計画に伴う事前発掘調査で斎宮跡の所在が裏付けられ、東西約2キロ、南北約0・7キロの約137ヘクタールに及ぶ広大な面積が同54年、国史跡に指定された。伊勢神宮の皇祖神、天照大神を祭るため天皇が即位ごとに派遣した未婚の娘「斎王」の宮殿と役所の跡だ。

平成元年に斎宮歴史博物館、同11年にいつきのみや歴史体験館がそれぞれ開館。同27年には斎宮寮庁を復元した史跡公園「さいくう平安の杜」が完成し、施設整備が進む。

また、同年には町内の斎宮・斎王に関わる文化財をつなげたストーリー「祈る皇女斎王のみやこ 斎宮」が文化庁の日本遺産に選ばれ、情報発信や観光に弾みが付いている。

同町の活性化の中心となりつつある観光振興で新町長の手腕に期待がかかる。