<まる見えリポート>剪定技能職が不足 講習会人気も初期投資壁に

【植木の剪定作業をするシルバー会員ら=鈴鹿市道伯2丁目で】

10月は全国一斉の「シルバー人材センター事業普及啓発促進月間」。三重県の鈴鹿市シルバー人材センター(有安政章理事長)では、年末に向けて一般家庭を中心とした植木の剪定依頼が増加する中、剪定技術を持つ技能会員が不足しており対応が追いつかないという。「新規受付は来年2、3月まで空いていないため、申し込みができない状態」と、人材不足に悲鳴を上げる。

同センターは、就業を希望する市内在住の60歳以上が会員として登録できる。現在の会員数は813人(平成30年3月末)。登録人数自体は平成25年度以降、年々増加傾向にあり、高齢化の進展に伴い今後も増加が見込まれている。

施設管理や清掃作業、家事援助など、高齢者の豊富な知識や経験を生かせる活躍の場は幅広い。

この中で、剪定会員は現在約40人。技術力向上のため班ごとのリーダーを中心としたグループ制で作業にあたるとともに、事故などの危険回避のため、基本的には2人以上で業務に取り組む。

剪定、伐採、消毒作業は一般業者に依頼するより安価なことから市民の需要が高く、今年度の受付件数は計1774件(8月28日現在)あり、今月は約240件、来月は約250件の予約が入っている。年始支度に入るため、平均より百件程度多い上に、杉山保夫業務課長(63)は「今年は7月から雨が多く、夏は猛暑、9月は台風で作業が思うように進まなかった」と、天候不順による要因を挙げる。

慢性的な剪定会員不足は天候だけの問題ではない。剪定会員は請負業務のため、仕事を始めるには自費での道具の購入と軽トラックの所有が必要になる。初期投資が高額なことが、気軽に始められない大きな要因になっているという。同センターが会員獲得に向けて実施する剪定講習会は、例年根強い人気があるものの、2年連続で会員獲得には至らなかった。

新人の育成も今後の課題の一つ。市の講習会は不調に終わったが、県シルバー人材センター連合会主催の剪定講習会を通じて、今月1日から新たに2人が活動を始めた。道具の使い方など基本的なことを学び、1人で対応できるようになるには約3年かかる。次世代に技術を伝承するため、剪定作業をビデオで撮影した動画集も作製した。

作業現場を訪問した。唯一の女性会員で、同市長太新町の服部富士子さん(69)は平成27年の市講習会の受講生。「覚えることが多すぎて抜けていくことの方が多いが、仲間と助け合って楽しんでいる」と男性会員に混じって紅一点、生き生きと仕事に励む。

リーダーの同市庄野共進、山本昭二さん(73)は会員歴11年目。「探求心が必要な非常に奥の深い仕事。夏の暑さ、冬の寒さを我慢できるのは、好きなことだから。元気で働くことが生き甲斐につながる」と、体力作りのため週5日はジムに通う。

同市旭が丘の元造園業、山田善一さん(74)は会員としては2年目だが、20年以上の経験がある。「技術を生かせる仕事。お客さんに喜んでもらえるのが一番」と、会員らはそれぞれの立場でやりがいを見い出している。

杉山業務課長は「企業からの発注も増えているが現状では対応しきれない。指導体制は万全なので、積極的な広報活動で啓発していく」と話した。