2018年8月20日(月)

▼病は気から、という。新薬の臨床試験で、それまでとの効果を比べても有効の証明にはならないそうだ。新薬で治療を受けたことで薬が効いたと患者も医者も思い込んでしまうからで、正しい評価をゆがめると、本紙「内科医つれづれ草」で高山浩一・京都府立医科大教授が書いている

▼未開の部族社会では正露丸ですべての病気が治ったという話がある。思い込みだろうが何だろうが、効きさえすればいいじゃないかという気がするが、それでは科学的証明にはならないということだろう。で、新薬に見た目だけ似せた「ブラセボ」を混ぜ、本物かどうか分からないようにして服用してもらう。半信半疑で飲む、すなわち心と体を切り離した治験の結果が信頼できるデータというから〝丸山ワクチン騒動〟は尽きまい

▼働き方改革など、我が医療の現場にはないと1カ月ほど前、同欄に書いたのも高山教授だった。医師の過労死が社会問題になってきた時だったので、唐突な断定の真意を考えたが、県医師会が働き方改革を目指して病院関係者と話すと警戒厳重だと言っていたのを思い出した。東京医科大の女子受験生点数操作問題で、医師の6割強が「理解できる」と、医師の人材紹介会社のアンケートに回答している。出産・育児など家庭での負担が重く、職場で迷惑をかけてしまう思いが強いのだ

▼出産・育児後の女性医師は仕事への復帰意欲が強いのに対し、男性医師は7割が復帰を望まないという調査もある。女性医師問題の解決が医療現場の働き方改革になるという意識は低いのだろう。医者の不養生ではある。