<まる見えリポート>鈴鹿欅高等学院 発達障害に特化、来月開校 福祉事業の経験活かし支援

【6月1日に開校する鈴鹿欅高等学院=鈴鹿市算所1丁目で】

障害を一つの個性ととらえ、強みとして引き出したい―。三重県鈴鹿市内で障害者通所支援施設を運営する「エンジョイ」(鈴鹿市、岩田貴正社長)は6月1日、福岡県に本校を置く「広域通信制明蓬館(めいほうかん)高等学校」の「サポート校」(補習センター)として、同市算所1丁目に、「鈴鹿欅(けやき)高等学院」を開校する。発達障害に特化したサポート校として、生徒らの発達特性に合わせて学習や精神面を支援し、3年間で高校卒業資格を取得できる仕組み。岩田社長(37)によると、県内で福祉関連事業者が通信制高校の運営に携わるのは珍しいという。

エンジョイは現在、市内五カ所で障害を持つ児童らの放課後デイサービス事業などを展開。小1から高3まで約140人が登録し、放課後や長期休業中に社会性や生活能力向上のための訓練などをしている。

岩田社長は「(県立)特別支援学校の高等部は卒業しても高卒にはならず、全日制高校に進学しても環境に適応できない子どもたちがいる。(自分たちなら)経験を生かして柔軟に受け入れることができる」と話す。

本校の明蓬館高校は、発達障害に配慮した国の認定特区校。テストではなく、個々の特性を生かした作品や自作レポートなどの成果物で単位取得できるのが特徴。鈴鹿欅学院は通信制高校補習センターの位置づけで、同校の全国18カ所ある発達障害に特化したサポート校の一つとして開校する。教員免許を持つ3人を含む4人が、生徒らの発達特性に合わせて学習や精神面を支援する。

定員は、通学と、インターネット授業による自宅学習の2コースで、各10人。現在のところ、市内の高2男子2人が入学する。

校舎として元銀行を改装し、2階部分を高校の教室として活用する。

学院長には元同市教育長の玉川登美男氏を起用。市内教育現場での経験や実績を生かし、地域や行政との連携を図る。玉川氏は「今までとは違った現場で、子どもたちのために尽力したい」と意気込みを見せる。

併せて、鈴鹿医療科学大学や地域の福祉事業所などとの協力体制を構築し、専門機関との連携や就業支援につなげていきたい考え。

生まれつきの知的障害と自閉症を抱え、市立郡山小の支援学級に在籍する5年生の伊藤楓ちゃん(10)は、同社の放課後デイサービスを利用する。母親の佳苗さん(43)=同市郡山町=は「俗にいう『グレーゾーン』の子どもと母親が一番生きづらい。どっちにもいけずに、治るんじゃないかと期待してしまう」と話し、開校について「理解してくれる場所や選択肢は、一つでも多い方がいい」と期待を込める。

岩田社長は「義務教育が終わったら支援が終わりではいけない。その先が必要。高校を作ることで就業の幅が広がり、将来に不安をもつ保護者や子どもの受け皿になる」と熱く語った。