<まる見えリポート>三つどもえの名張市長選 「4期16年」評価に注目 三重

4月8日告示、同15日投開票される三重県の名張市長選は、亀井利克市長(65)が5選を目指して立候補を表明したことで、三つどもえとなる見通しだ。新人の森脇和德元市議(44)と北川裕之県議(59)は古くから亀井氏と関係があり、市長選は「師弟対決」の様相。「私にしかできないことがある」と主張する亀井氏に対し、新人の2氏は「5期目となれば長すぎる」と代替りを主張する。「亀井氏が圧倒的な地盤を誇る」とされる見方が多くを占める中で、4期16年間の亀井市政に対する有権者の判断に注目が集まる。

(海住真之)

 
亀井氏と森脇氏は30年以上前から親交がある。家族ぐるみの付き合いだったといい、森脇氏は幼少の頃に亀井氏を「かめにい」と呼んで慕っていた。森脇氏の父が経営する結婚式場がリニューアルした際、第一号となった新郎は亀井氏だったという。

亀井氏が初当選した平成14年4月の市長選でも、森脇氏は後援会のメンバーとして亀井氏を支えた。森脇氏は「亀井さんが市長に初当選したときは自分のことのようにうれしかった。その時に経験したことが政治家を志したきっかけの一つだった」と振り返る。

亀井氏を「師匠」と呼ぶ北川氏も市職員時代からの関係。北川氏は市役所に入る直前の昭和56年3月に市でアルバイトをしていた。初日は新年度から始まる学校に机を運び込む作業を命じられたが、学校に向かう軽トラックを運転したのが亀井氏だった。

「おまん、どっからきたんや」。笑みを浮かべて尋ねる亀井氏に、北川氏は「随分と面白い人が市職員にもいるもんだな」と思ったという。北川氏は入庁後も亀井氏と同じ市教委で勤務。「当時は市長選で戦うことになるなんて、考えもしなかった」(北川氏)

亀井市長の「弟子」に当たる2氏が批判するのは「多選」。5期目となれば、県内の現職市長で最多。前名張市長の富永英輔氏も三期で亀井氏に破れた。森脇氏は「亀井氏も富永氏の多選を批判して当選したのに、ご自身は多選でも良いのか」と批判する。

一方の亀井氏は立候補を表明した21日の集会で、今回の市長選を「最後」と言い切った。対抗馬が多選を批判する中でも立候補を決めた理由について、亀井氏は「私しかできないことがある」と説明。その一例として市立病院の産婦人科開設を挙げた。

■  ■
気になるのは選挙の行方だが、「地盤が強固な亀井氏が圧倒的」との見方が大半だ。亀井氏は県議時代を含めて27年間の政治経験があるベテラン。「市長選で投票してくれた全員を任期中に訪問する」と言われるほど、支援者回りの熱心さでも知られる。

市議の多くを味方に付けており、自民票だけでなく、市内で8千票はあるとされる公明票の多くを取り込むとみられる。ただ、平成22年の市長選では対抗馬の元国交省職員に3500票差まで追いつかれたこともあり、予断を許さない情勢だ。

森脇氏は市議時代の支持者や同級生を中心に後援会を組織。名張商工会議所の辰巳雄哉顧問が後援会長に就任し、財界への浸透を図る。昨年12月に市議を辞職して以降は、政治団体の街宣車で「青年市長の誕生」を訴えるなど、無党派層の掘り起こしに懸命だ。

中森博文県議(自民党、4期、名張市選出)の後援会も、多くが森脇氏の支援に回るという。一方の中森氏は亀井氏の集会に来賓として出席しつつも、2月に開かれる森脇氏の事務所開きに出席を予定するなど、保守系2氏の間で「難しい立場」(中森氏)だ。

北川氏は3氏で唯一の民進系。「新政みえ」の県議や連合三重、民進党県連の支援を受けて選挙戦を戦う「三重県方式」の名張版で挑む考えだ。前回衆院選で同市が新たな選挙区となった中川正春衆院議員も、取材に対して北川氏を支援する考えを示している。

ただ、3期連続で無投票当選の北川氏は選挙戦のノウハウに課題を感じているようだ。同じ新人の森脇氏より3カ月ほど立候補の表明が遅れたことで、選挙戦の準備にも出遅れ感がある。「できることから急ピッチで進めていくしかない」と巻き返しを図る。