2018年1月29日(月)

▼場所前の横綱の暴行事件や貴乃花親方の不可解な言動、立行司の不祥事など、問題いっぱいで始まった大相撲初場所は、三横綱の不振に現役力士の無免許運転容疑、春日野部屋の四年前の傷害事件発覚、千秋楽を待たずに平幕が優勝を決めるなど、ファンの期待を裏切り続けながら15日間、満員御礼の札止めだった

▼八百長疑惑で人気が冷え込んだ七年前を繰り返さなかったのはご同慶の至り。暴行横綱を切り捨て、第一人者横綱白鵬の土俵下での物言いや貴乃花親方の行動に一定の処分を下したことが評価されたか。これ以上、嫌な話は聞きたくないというファン心理が働いたのかも知れない

▼春日野部屋傷害事件と、それを公表しなかった日本相撲協会、力士の無免許運転は、七年前の「改革」が絵空事だったことをうかがわせるが、力士の気質も昔と変わったと思わせたのは、途中休場した横綱稀勢の里が一部報道機関の取材に応じての発言だ。「次で進退懸ける」と共同電は伝えた。休場中の横綱が進退について発言する。よくある話なのかどうか

▼内容は本人が「常にそういう思いでやってきた」と言う通り、陳腐とは言わぬまでも勝負の世界に身を置く以上、言わずもがなのことだろう。「ここでは終われない気持ちだ」に至っては、記事では「復活への決意」と評したが、ある種痛ましさを感じた。「もう一番」「もう一番」と食い下がる素人将棋を連想してしまう

▼稀勢の里は黙々と稽古に励み、泣き言は言わないと言われた。その横綱にして、追い詰められてつい、弱気の虫が顔を出したのかもしれない。