2018年1月13日(土)

▼視覚障害者の列車死亡事故が全国で相次いでいるからという。県はユニバーサルデザインセミナーで全盲の落語家の「駅で落ちない落語」の公演会を開いた。三重県職員や鉄道会社員ら約130人が参加したというと、県が熱心に視覚障害者の安全・安心に取り組んでいる姿が浮んでくる

▼実態は違うと言うつもりはない。東京・地下鉄で盲導犬を連れた視覚障害者がホームから転落して列車に接触し死亡する事件は一昨年8月。同10月には近鉄大阪線でも発生。昨年もJR東日本、同西日本で続き、転落防止のホームドアの設置や、ホームの端を知らせる点状ブロック「内方線」の整備を国が指導した

▼いずれも一定の乗降客数がある駅に義務づけられ、県が特に踏み込んだ対策を打ち出したわけではない。「声かけをいたしましょう」と呼びかけはするが、広がりつつある省力化、無人駅など、地方都市らしい施策はないのが実情だ

▼ユニバーサルデザインセミナー自体、あまり聞いたことはないが、もともとは工業デザインに分類された製品開発が主体で「すべての人が生活しやすい社会デザイン」という広義のテーマは初めてではないか

▼鈴木英敬知事が年頭、障害者雇用のさらなる促進を語った。法定雇用率をゆうゆう突破する県で、視覚障害者の雇用はゼロだ。このところようやく達成するようになった県教委でも、教育要員として一人だけ。多様な障害者の中で、要は数字さえあげれば十分という姿勢が見え隠れしなくもない

▼報道資料には「要約筆記、手話通訳あります」。ブラックユーモアの気がしなくもない。