2017年6月4日(日)

▼地方自治体の国への要望といえば、公共事業など社会資本整備や政策、当面の課題への支援と相場が決まっているが、三重県議会は東海北陸七県議会議長会議で、障害者の公共交通機関の運賃割り引きに、精神障害者も加えるよう求める議案を提出した

▼障がい者差別解消条例策定調査特別委員会新設効果か。身体、知的、精神障害者のうち「身体」「知的」は多くの公共交通機関の割引対象になっているが、「精神」はそのほとんどで除外されてきた

▼日本が障害者と患者を分けて考える特異な国であることと無関係であるまい。疾患が安定すると障害者、進行していれば患者で、それぞれ福祉、医療サービスの対象者としてきた。精神障害はかつて精神分裂病、平成十四年から統合失調症が代表例で、その名の通り医療の対象。病人に交通割引など、考えもしなかったろう

▼精神障害者は古来軟禁対象でもある。近現代も私宅監置を認めた精神病者監護法やライシャワー事件を契機にした強制入院制度の促進で、精神科病院は隔離政策を担い、病床数、入院期間とも世界最多

▼犯人が精神障害を装った池田小事件によって精神障害者に医療観察が実施されることとなり、相模原殺傷事件によっては、強制入院者の退院後〝支援計画〟を作成する精神保健福祉法改正案が国会審議中。警察の終生観察が可能だと懸念されている

▼精神障害者が世間の目におびえて暮らす日々がますます進行しようとしている。せめて安くなった電車、バスに乗って旅行を楽しんでというのは乙な提案だが、ブラックユーモアのような気もする。