<まる見えリポート>林業専門職の確保が急務 森林経営管理法が施行

【新制度の研修を受ける市町の職員ら=津市島崎町のサンワーク津で】

手入れが行き届いていない私有林を市町村が集めて管理できるようにする「森林経営管理法」が4月に施行された。荒れた森林を集約し、管理を林業経営者に委託する仕組みだが、森林の所有者と林業経営者を仲介する市町の役割は大きい。林業専門職がいない市町は人材の確保や育成が急務となっている。県は市町を支援しようと「みえ森林経営管理支援センター」を4月に立ち上げた。

三重県内の3分の2を森林が占め、うち約9割が民有林。県は所有者が管理できていない森林の実数を把握していないが、林野庁の調査ではその約8割が手入れ不足とされる。間伐などの手入れをしないと、山がやせ、山崩れや風倒の被害が発生するおそれがある。

これまでに、県は森林の所有者と企業をマッチングし、「企業の森」として管理を委託していた。一定の成果は得られているものの、民間の力にも限界がある。新制度では、管理ができない所有者から市町が委託を受け、間伐などの森林整備を進めることになる。

実際には、荒廃した森林を市町がいったん預り、「森林バンク」として集約した上で、意欲のある林業経営者に貸し出す。市町が森林所有者と林業経営者の仲介役を担うことになる。市町が介在することで、森林所有者が林業経営者に任せやすくする。

ただ、これまで森林整備に関わる事業は国や県が担っていた。市町には林業の専門職がおらず、専門知識も人材も不足しているのが現状だ。県に市町への職員派遣を求める自治体もあるが「29市町に県職員を送る余裕はない」(県森林・林業経営課担当者)。

市町の人材不足を補おうと、県は4月にみえ森林経営管理支援センターを設立。県森林協会に運営を委託し、森林管理のアドバイザーを配置した。4月に本格開講した「みえ森林・林業アカデミー」でも市町職員向けの講座を全11回実施する予定だ。

今月9、10日の両日には、県森林協会がサンワーク津(津市)で、自治体職員向けの研修会を開いた。県内から集まった職員ら約60人は、森林の所有者から管理の委託を受けるための手続きや管理を委託する林業経営者の選定手順を学んでいた。

市町で独自に専門知識のある職員を雇う動きもある。県内で森林面積が最も広い津市は昨年度、林業関係の職務経験者1人を採用。本年度には、林業技術職だった県の定年退職者1人を非常勤参与として採用し、林業関係の体制強化を図っている。

元県職員を採用する動きは他市町でもあるが、採用に難航するところも。亀山市の担当者は「市出身の県職員OBを雇う予定だが、なかなか難しい」と明かす。専門知識のある職員を増やすため、来年度は全庁的にみえ森林・林業アカデミーの受講を促す考えだ。

市町が苦慮するのは、森林所有者への対応だ。津市林業振興室の担当者は「所有者との管理計画策定や制度の説明には専門知識が必要になる。所有者が林業に詳しいとは限らないので、職員は全く分からない人にも説明できるようにしなければならない」と語る。

新制度のスタートで対応を迫られる市町。9月には、所有者への意向調査や森林整備を進めるための財源となる「森林環境譲与税」が都道府県や市町村に配分される予定だ。県内では住民向けの説明会を開いたり、森林所有者の意向調査に着手したりと、市町による森林整備が進もうとしている。県には引き続き、人材が不足する市町へのフォローが求められる。