2018年12月27日(木)

▼県残土条例制定を求める請願が平成27年県議会で採択されたが、県は9月議会で「県内全域において残土の処理などに関して直ちに条例制定による新たな規制が必要な状況ではないと考えている」

▼大量建設残土が紀北町と尾鷲市に運び込まれて市町民の不安が募り、紀北町は規制条例を制定しようとしているというのに、冷たい反応ではないか。同町が苦しんだ産廃訴訟を想起させる。処理施設の事前協議書が県に提出したことに伴い、町は後追いで水道水源保護条例を制定して阻止に動いたが、県は北川県政誕生20日後のどさくさに許可し、20年訴訟に突入した

▼頻発した不法投棄とは別に、各自治体は産廃施設の阻止に悩み、県議会でも問題になっていた。水源保護条例は市町村の数少ない対抗策だったが、県は住民や自治体側に寄り添おうとはしなかった

▼鈴鹿市にPCB入りドラム缶が1200本不法投棄されていた事件でも、県は「5、60本で中身は無害」と企業の説明をそのまま議会でも言い続けた。掘り返した結果、大量のPCBが検出されて田川亮三知事は昭和49年7月議会で「県の行政姿勢に対し遺憾」と陳謝している(萩原両吉著『灰色の空を突き破れ』)

▼残土条例制定を求める27年の請願採択の対象は伊賀地域。県の放置で紀北町へ広がった形だが、議会では環境生活部長が県土整備部所管の港湾管理、農林水産部の森林法を含めて問題ないと太鼓判を押している。教訓がまたも踏みにじられている気がしなくもない。全国では最低11府県4政令市が独自の条例を制定している。