2018年9月19日(水)

▼四日市市で抑留体験談と慰霊墓参団員リポートなどの「シベリア抑留の労苦を語り継ぐ集い」が開かれた。全国強制抑留者協会県支部の林英夫支部長が基調講演で、極寒、飢餓、重労働の三重苦の3年間を語ったが、抑留は最長10年に及ぶ。死者約6万人は定説だが、確定しているわけではない

▼終戦直前に突然日ソ中立条約を破棄したソ連軍侵攻に始まる歴史の暗部で、死者30万人以上の説もある。原爆と違って、核となる行政体のないことも事実関係や補償、謝罪問題を遅らせている

▼ソ連参戦について、ロシアの日本研究者はノンフィクション作家・保阪正康氏の質問に「ヤルタ会談の秘密協定に基づく。日本との中立条約など国益の第二、第三」と答え、第一次大戦後のシベリア出兵で日本は我が国民に対し何をした、と反論してきたという。抑留問題を非難しても、関東軍との密約説を持ち出してきかねない

▼プーチン大統領は一昨年来日した時の記者会見で、ソ連が2島返還を主張した昭和31年の交渉でダレス米国務長官が「受諾したら沖縄を返還しない」と日本に圧力をかけてきた話を持ち出し、北方領土問題は米国の利益が絡むと示唆し平和条約締結第一の考えを示した

▼まず平和条約をと安倍晋三首相に提案したのはその延長線と言えなくはない。国益のためには手段を選ばぬ政治家のしたたかさだ。その後2人でのやりとりで北方領土優先の原則で反論したというのが安倍首相だが、ロ大統領補佐官は首相から提案の反応なしと語った。首相もしたたかさを示したか。国益のためではなさそうだが。