2018年9月20日(木)

▼「売り手市場 行きたい会社は 買い手市場」。就職協定が廃止になっても買い手市場と言われても、学生の不安は氷河期時代と変わらないのだろう。第一生命保険が「サラリーマン川柳」番外編として同グループ内々定者らから集めた句を発表した

▼「面接で 話弾むも 電話来ず」「涙でた 苦労実った 内定書」。悲喜こもごもも変わらない。「『ガクチカ』が 辞典に載る日は 来るだろか」と、せめて就活略語で不条理な状況を笑い飛ばそうという気持ちも健在だ

▼「ガクチカ」は面接やエントリーシートでよく聞かれる「学生時代に力を入れたこと」。「またか」とニヤリとする学生の心がのぞく。「オワハラ」は内定を出した企業が就活を終わらせるよう強要するハラスメント。学生にとって理不尽な就職戦線の実態が込められている

▼そんな現実からすれば、守られたことのない就職協定がどうなろうと関心はなさそうだが昭和59年、政治家90人以上に未公開株が贈られた大規模な贈収賄事件リクルート事件の政界ルートの一つが藤波孝生元官房長官が巻き込まれた就職協定を巡る請願だった

▼職務権限との関連性が薄く、検察は大物政治家を立件できなかった。贈賄側のリクルート社会長江副浩正著『リクルート事件・江副浩正の真実』は代わりに藤波元官房長官を標的にしようとして脅し、すかして調書を作成していく検察の手口が活写されている

▼就職協定がどうなろうと会社にとって何のメリットもないというのが江副元会長だが、就職協定の廃止に検察は内心ほっとしているかもしれない。