世界を視察、機械開発 大家族育ち、感謝忘れず ウエスギ会長 上杉勝治さん

「感謝の気持ちは常に忘れない」と話す上杉会長=四日市市天カ須賀新町のウエスギで

 四日市市天カ須賀新町に本社を置くウエスギは、非鉄金属や被覆電線などの産業廃棄物リサイクル業を中心に事業展開している。大正10年創業。

 12人きょうだいの末っ子で、「1番上の姉とは24歳違い」。家業で忙しい両親に代わり、「姉たちに育ててもらったようなもの」だが、食事は必ず「家族全員そろってから」が決まり。「食卓の席は父の左側が長男、右側が自分と決まっていた」。「両親は厳しかったが、家の中はいつもにぎやかだった」と振り返る。

 戦中生まれで、子どものころは食糧難だった。「毎日のようにイモやカボチャのつるを食べていたから、夏休みに農業を営む祖父母の家に行くと、白米が食べられるのがうれしかった。ご飯だけでも本当においしかった」と語る。

 父親の会社が人手不足で忙しくなってきたため21歳で入社した。仕事は既に現場に入っていた5人の兄から学んだ。経理を任され、経験者の姉から教わりながら独学で身に付け、いつの間にか数字で会社全体を見るようになる。「どうすればもっと会社を盛り上げていけるのか」と考えるようになり、少しずつ「企業化し、組織化しなければいけない」と思うようになった。

 兄から引き継ぎ、40歳で社長に就任した。ごみとして処分していた産業廃棄物を「細かく分別することで、リサイクルできる」と考えた。世界各国のリサイクル工場を視察し、技術を学び、試行錯誤を重ねながら自ら機械を設計し、5年かけて新しい機械が完成した。「ものづくりは好きだったから、楽しかった」と笑顔を見せる。「根本は『もったいない』の気持ち。捨てるものはない」

 信仰心があつい両親の下、先祖を大事にする教えを忠実に守ってきた。毎朝三時半に起き、仏や神、先祖に手を合わせ、写経する日課は50年近く続く。亡くなった従業員と先祖の供養を兼ね、週1回の墓参りと掃除は欠かさない。毎夏、滝行し、従業員の健康や商売繁栄を祈願する。「経営も神仏に通じるものがある。手を合わせていると自分に強くなる」と熱く語る。

 長男の圭司さん(44)に6年前、社長を譲った。第一線からは退いたが、朝礼やラジオ体操、会議には出席し、助言しながら見守る。「感謝の気持ちは常に忘れない。自分1人では何もできない。周りがいてこそだと思う」と話す。

略歴:昭和18年生まれ。四日市市出身。同39年上杉物産(現ウエスギ)入社、同57年社長、平成20年会長。四日市商工会議所理事。