―中部経済の活性化を 税務会計や事業承継相談― 「ミッドランド経営」社長 古川典明さん

【「中部地方の経営者の方々に寄り添い、企業の安心経営をワンストップでサポートしていきたい」と話す古川さん=四日市市久保田で】

三重県四日市市久保田の「ミッドランド経営」は、父の故寛さんが同市西浦で昭和43年に開業した「古川寛会計事務所」が前身。同60年に入社した翌年、「古川経営総合研究所」を新たに設立し、中小企業の税務会計業務に加え、企業の経営計画や事業承継の相談を受ける部門を設けた。

父寛さんが他界した平成13年、現在地に事務所を移転し、同24年に社名を「ミッドランド経営」に変更した。現在は社員72人が、「感謝・信頼・創造」の理念の下、税理士・不動産鑑定士の弟と社会保険労務士・行政書士のいとこと共に中部地方(ミッドランド)の中小、中堅企業の税務、会計、労務、財産、経営面をワンストップでサポートしている。

相続と贈与、黒字化・資金繰りの改善、事業承継やM&A、人事労務、経営情報のIT化、医療・介護の分野を強みに業績を伸ばしている。

四日市で3人兄弟の長男として生まれた。7歳の時、大けがをした弟に母がかかり切りになった。1年ほど母方の実家に預けられ、母に会えない間は祖父母が愛情を注いでくれた。幼い頃から父が「お客さんに喜んでもらった」と、うれしそうに母に話す様子を何度も見て、大きくなったら父と同じ仕事をしたいと思っていた。

中部中、四日市高校を経て慶應義塾大法学部に進学。法律学科で学ぶ傍ら、夜間の公認会計士・税理士専門学校にも通った。卒業後は、名古屋市の「丸の内会計事務所(現トーマツ)」に入社した。上場会社の監査業務などに携わりながら、4年目に公認会計士3次試験に合格。翌年、父の事務所に入所した。

会計事務所が大規模と小規模とに二極化する中、今後の方針を決めるべくセミナーや研修会に参加して全国の先進事務所の成功事例を研究するとともに、地元の異業種交流会にも積極的に参加した。そんな時、顧客経営者の推薦で民間初となる県の監査委員を1期4年間務めたことなどで、人脈が広がり事業拡大につながった。「人に恵まれ、父親の理解もあり思うようにやらせてもらえた」と振り返る。

倒産の危機にあった企業経営者の相談を受け、まず事業計画を作成し直し、社長の給料減額と会計事務所の報酬もストップするなどの提案をした結果、経営を立て直すことができた。経営者は「耳に痛いことばかりで最初は納得できなかったが、おかげで何とか息子にバトンタッチできた」と喜んでくれた。

社員が心身共に健康で働ける職場を目指して、6年ほど前からフレックスタイムの導入と残業削減、朝昼2回のラジオ体操を実施。また、希望者には月1回のカイロプラクティック施術を提供したり、健康アプリを使って毎月ウオーキングキャンペーンを実施したりしている。「コロナ禍で在宅ワークも多くなった。生産性の向上も推し進めつつ、社員の幸福を追求していきたい」と話す。

現在は、母と妻の3人暮らし。長男は公認会計士の資格取得後、次男は税理士資格を取得後、家業に入社した。3男は大手電機メーカーの海外駐在員として働いている。「父の仕事を手伝っていたこともあり、母は仕事の話にも喜んで耳を傾け、妻と長男の嫁と3人の女子会も楽しんでいる。家庭は心から安らげる場所」と笑顔を見せた。

愛知、岐阜、三重の5つの会計事務所がアライアンス(同盟)を組み、地元の中小企業支援で中部経済の活性化を図り、将来は日本全国の活性化につなげていくことがビジョン。

「大規模コンサルティング・ファームにも引けを取らない最先端のスキルと特性で、中部地方の経営者の方々に寄り添い、企業の安心経営をワンストップでサポートしていきたい」と熱く語った。

■昭和29年生まれ。同52年慶應義塾大法学部卒業。同55年「丸の内会計事務所」入社。同59年公認会計士・税理士登録。同60年「古川寛会計事務所」入所。同61年「古川経営総合研究所」設立。平成8年―同12年県監査委員。同24年「ミッドランド税理士法人」設立。

略歴: