大学卒業後、東京の大手ゼネコンで８年、実家が営む建築建材会社で４年間の建設業経験を経て平成12年、津市藤方に株式会社「アポア」を創業した。住宅・店舗建設・エクステリアに加え、同28年からはホテル業をはじめ飲食業、理容業などに進出、事業を多角化して県内外で業績を伸ばしている。
自然に寄り添う住・商業空間の総合プロデュース会社として唯一無二の建造物を創り出し、クライアントが望む以上の結果を出すことが社のモットー。良きものは生かし、悪しきものを変革していく知識と経験の習得に努め、顧客の道案内ができるよう社員50人余が挑戦し続けている。
三雲村（現松阪市三雲町）で３人兄弟の長男として生まれた。２歳の時、自宅敷地内で建材が腹部に倒れて内臓破裂の大けがを負ったが、幸い一命を取り留めた。小３からソフトボールを始め中学で軟式野球、高校では硬式野球に打ち込み、高３で県大会準優勝を果たした。「共に汗した仲間とは、今もＯＢ会で会うと当時の話で盛り上がる」と話す。
幼少時から長男が家業を引き継ぐものだろうと考えていた。進学した栃木県の足利工業大学建築学科では勉学の傍ら、日本拳法部で体を鍛えた。アルバイトにも精を出し、バイト代で友人らとお酒やパチンコなども楽しんだ。
実社会で経験を積んでから家業にと、大学卒業後は大手ゼネコンに入社し、工程管理を担当した。建築現場でベテラン職人らと専門的なことを話し合えるように、帰宅後は建築士を目指して受験勉強に励み、１級建築士、１級土木施工管理技士、１級建築施工管理技士、宅地建物取引士の資格を取得した。「生涯で１番真剣に勉強した時期だった」と振り返る。
バブル期はマンションやオフィスビル、倉庫などの建設ラッシュで人手不足になり、現場に泊まり込みで担当外の仕事も多く体験した。だが、バブル崩壊後に家業が経営不振に陥った状況を知り、何とか立て直そうと８年間務めたゼネコンを退社して実家に戻り、家業「ハマタケ」に入社した。
ハウスメーカーの下請け仕事の受注に奔走し、父と弟、外注職人らと心をひとつにして経営再建を図った。昼間は現場仕事、夜は製図を引きながら仕事をこなし、数年で業績を回復することができた。
「ハマタケ」での仕事と並行して、平成12年に企画提案、設計、施工を手掛ける元請け建設会社「アポア」を創業。細かい部分まで打ち合わせを重ね、お客さまの夢を形にする家造りをスローガンとした。併せてオリジナル家具やインテリア、庭造りまで施主のイメージを追求したトータルコーディネート提案が「全てお任せして良かった」「さすがアポアさん」と好評を得ている。「お客さまの笑顔が何よりの励みになる」と語る。
長男匠さん(27)、次男真さん(26)、長女未結さん(21)３人の子どもたちは独立し、今は経理を担当する妻優美さんとの暮らしを、やんちゃな愛猫アデルがにぎやかにしてくれる。「好きな道を歩む子どもたちを、妻と共に見守っていきたい」と話す。
アポアの各オープンハウスでは、豊かな生活スタイルを応援するための「ハーブ教室」や「園芸教室」「英会話教室」などを定期的に開催し、家を建てた方々とのつながりと新築を考えている方々への発信をしている。「以前、依頼を受けて中国でフラワーショップの建設を手掛けたこともあり、将来は世界の人たちとのビジネスも視野に、地図に記されるような社会遺産を手掛けたい」と意欲を語った。
略歴：昭和42年生まれ。平成元年足利工業大学建築学科卒業。同年大手ゼネコン入社。平成８年「ハマタケ」入社。同12年「アポア」創業。同16年「ハマタケ」社長就任。同24年「ハマタケ」を「ビリーブ」に社名変更。