青木定治氏の店で修行 31歳で独立を決意し三重に フランス菓子「パティスリー・シェ・ニノ」オーナーシェフ 二宮幸介さん

「素材にとことんこだわった作りたての菓子を提供したい」と話す二宮さん=朝日町白梅の丘の「パティスリー・シェ・ニノ」で

 三重郡朝日町のフランス菓子「パティスリー・シェ・ニノ」を平成23年に創業した。フランスの伝統菓子を中心に、季節ごとのフルーツを使ったケーキをはじめ、オーナー独自のアレンジを加えたシェフの気まぐれケーキなど18種、クッキーやマドレーヌなどの焼き菓子20種と手作りジャムが並び、店長を務める妻奈津美さん(37)とスタッフが笑顔で接客をしている。

 普段のメニューに加え、月曜、火曜、金曜日はクロワッサンやシナモンロールなど4―5種類のパン、木曜日は焼きタルト、土曜、日曜、祝日はアップルパイや旬野菜のキッシュなど、シェフ自慢の味を日替わりで楽しめる。

 白梅の丘交差点西側に建つ白いタイル造りのシックな店舗は、男性客も気軽に来店できるように配慮した。口コミで人気が高まり、今では男性客がほぼ半数を占め、バレンタインデーよりホワイトデーの方が多忙になっている。

 四日市市鵜の森で、2人兄弟の次男として生まれた。幼いころから冒険心旺盛で、遠くの公園まで遊びに行って戻れなくなり、パトカーの世話になったり、高い木に登って近所の人に助けてもらったりと「今思えば笑い話ですが、人騒がせな子でした」と懐かしむ。

 祖父が板前、父がコックだった影響で、料理をするのが好きだった。当時、夢中で見ていたテレビ番組「料理の鉄人」をまねて、冷蔵庫にある食材を使って、兄とよく料理対決をしていた。「兄は洋食、自分はデザートの道に進もう」と、将来の夢を語り合った。

 中学時代は、新しいケーキやパイに挑戦して家族に試食をしてもらい、クラスや野球部の仲間に差し入れをしていた。来店する同級生らは「あの時のチーズケーキはうまかったな」などと声を掛けていく。

 菰野高校を経て、大阪あべの辻製菓専門学校で菓子作りの理論と技術を学んだ。卒業後、東京の菓子店で働き始めたが、厳しい修行とホームシックに耐えられず2カ月で挫折した。ケーキ作りから離れて1年後、見た目も味も感銘を受けた店のオーナーに「給料はいりませんから」と頼み込んで弟子入りした。フランスで修業を積んだオーナーの下で腕を磨き、4年目に支店のシェフを任されるまでになった。

 フランスでの研修旅行中、パリで成功した日本人初のパティシエ青木定治氏の手掛けた斬新なケーキに出合った。フランスで教えをこいたくて、仏語を学び始めた。そんな折、新宿伊勢丹に青木氏の日本進出2号店オープンを知り、迷わずスタッフに応募した。

 フランスからファクスで届く新作レシピに沿って作った菓子を、月1回、帰国する青木オーナーがチェックする。見た目と味の厳しい指摘の後の、「『おいしくなあれ』っておまじないを掛けながら作らないと駄目だよ」というアドバイスを心に刻み、実践している。

 4年半後、31歳で独立を決意して三重県に戻った。仏産のチョコレートやバターをはじめ、スペイン産アーモンド、県産のマイヤーレモンやミカンジュースなど、素材にとことんこだわった作りたての菓子を、自分の目の届く範囲で提供していきたいと考えている。

 「将来は、小エビのカクテルやカルパッチョなどのお総菜も並べ、フランスの街角にあるこじゃれた菓子店のような店にしていきたい」と、目を輝かせた。

略歴:昭和53年生まれ。平成9年県立菰野高校卒業。同10年大阪あべの辻製菓専門学校卒業。同18年パティスリー・サダハルアオキジャポン入社。同23年パティスリー・シェ・ニノ創業。