好きな言葉は「臥薪嘗胆」 一生懸命に、迷惑掛けずに 吉栄製作所代表取締役 吉金和來さん

「好きな言葉は、臥薪嘗胆」と話す吉金代表取締役=いなべ市北勢町の吉栄製作所で

 いなべ市北勢町の金属切削加工業「吉栄製作所」はモーターシャフトや減速機、建設機の部品を中心に製作している。

 子どものころからプラモデル作りや工作など、物作りが好きだった。「自分で作ることが楽しかった」と話す。

 小学1年のころ、伊勢湾台風で被害を受け、3年の春休みにいなべ市へ引っ越した。「弥富に近かったから、家の近くの田んぼや畑で、逃げ出した金魚が泳いでいた記憶がある」「水が引かないからいかだに乗って移動した。座敷の中が船着き場だった。今思えば、大人は本当に大変だっただろう」と振り返る。

 高校3年の時、父親が独立。仕事を手伝うことも多く、卒業後は自然に父親と一緒に働く道を選んだ。「職人かたぎで無口な父だったが、仕事に対しての姿勢は厳しかった」「口答えすると、よく金づちを振り上げて怒られた」と懐かしむ。

 「ああしろ、こうしろとはあまり言われなかったから、後ろ姿を見て覚えた。機械を大切にすることや、早朝5時ごろから電源を全部入れて工場を動かすこととか、今でもあの頃と変わらない」と語る。「父からは、毎日一生懸命やること、人に迷惑を掛けないことを学んだ」と話す。好きな言葉は「臥薪嘗胆(がしんしょうたん)」

 現在、1カ月に作る部品は100種類以上。一つ一つの部品に合わせて機械を調整し、品質を保つための厳しいチェックも欠かせない。納期を守ることは大変だが、「自分の作った部品がどんなところに使われているのか、実物を見たときは『活躍している』と満足感を感じる」とやりがいを説明し、「仕事を嫌だと思ったことは一度もない」と言い切る。

 多彩な趣味を持ち、プライベートも充実。歴史が好きで、大河ドラマはいつも見る。中でも戦国時代に興味があり、真田幸村は「最後まで忠義を尽くした男の中の男」と褒めたたえる。城巡りも好き。「姫路城は大きさも形状も圧巻で1番よかった。松本城は小ぶりでかっこいい。熊本城の石垣もよかった」と熱い語り口。

 子どものころから独学で描き続けている水彩画も、趣味の一つ。風景画を中心に、「気分が乗ったときに集中して描く」という。

 4人の孫と遊ぶのも楽しい。「最近は、ガンダムや妖怪ウォッチの絵を描いて、とせがまれることが多い」とうれしそうに話す。

 「今一番行きたいところは、広島の呉。大和ミュージアム(呉市海事歴史科学館)で、戦艦大和のレプリカが見てみたい」と目を輝かせた。

略歴:昭和26年生まれ。愛知県出身。同45年吉栄製作所入社、平成3年代表取締役就任。