「当たり前」を大切に 変わらぬ責任感の強さ 港屋代表取締役 吉川政樹さん

好きな言葉は「日々是前進」と話す吉川代表取締役=四日市市浜旭町の港屋で

 四日市市浜旭町に本社を置く港屋は、市内をはじめ、鈴鹿市や亀山市、菰野町の企業を対象とした手作り弁当の配達などを中心に事業展開している。委託管理給食システム、産業給食、麺類専門店。昭和16年、祖父の政一さんが食堂として創業した。3代目。

 「どちらかといえば、おとなしい子どもだった」と幼少期を振り返る。

 こつこつとねばり強い性格で、小学4年生の時に始めた剣道は、大学まで続け、2段の腕前。「最初に母に買ってもらった防具が足かせになって、やめるにやめれなかった」と、冗談交じりで笑いながら話すが、剣道を通じて礼儀や精神力などを身につけた。

 3人きょうだいの末っ子長男。「いずれは自分が家業を継がなくてはいけない」との思いは常に持ち続けており、大学は商学部を選択。しかし卒業後は、「サラリーマンをやってみたい」との思いから飲料メーカーに就職し、約3年間事務の仕事に就いた。

 仕事は楽しかったが、「このままではいけない」と責任感から、実家に戻ったのは26歳の時だった。

 入社後は盛りつけ、配送、洗い物などのほか、給与計算や採用まで、調理以外のことは一通り何でもやってきた。「自分でやらないと分からないから」と責任感の強さは変わらない。

 特に、経理関係などでは前職での経験が大いに役立った。ほかにも、大学時代のアルバイト経験を生かして、パソコンのソフトを作成し、事業のシステム化を図るなど、どんどん新しい手法に取り組んできた。「父からの直接的なアドバイスはほとんど無かったけど、いつも後ろで支えてくれているのを感じていた」と、現会長の一郎さん(79)の存在は、陰ながら大きい。

 35歳で社長に就任。「社長になっても自分の仕事は変わらないけど、何かがあって即答できない時に『社長と相談します』という逃げ場がなくなったのが、1番のプレッシャーだった」と、当初を思い返す。

 社長就任後は、「生産活動の裏方を担う大切な仕事」と、社員教育に力を入れ、衛生管理の徹底に気を配る。「『安全安心なものをきちんと届ける』という当たり前のことを当たり前にする大切さとともに、調理のもう1つの味付けスパイスとして、笑顔やもてなしの心も欠かせない」。地域密着型企業として、真心も一緒に届ける。

 「原料高騰や市場縮小など厳しい現状の中で、『おいしい』と言ってくれる人の声を聞くと、勇気づけられる」とやりがいについて語る。

 気分転換を兼ねた趣味は、7年ほど前から始めたマラソン。妻の美紀さん(47)と一緒に走る。東京マラソンなどの大会にも、これまでに10回以上参加した。「自分で距離もスピードも変えられるところがいい」と話し、「体を動かすのが好き。汗をかくとリフレッシュする」と楽しそう。

 好きな言葉は「日々是前進」。「少しずつでも進んでいればゴールが近づく。止まっていてはたどり着けない。マラソンと同じ」と話した。

略歴:昭和40年生まれ。四日市市出身。平成2年入社、平成12年代表取締役就任。