これが「自由の鐘」だ 大阪・関西万博の三重県ブース目玉

【12250個の真珠をあしらった「自由の鐘」=鳥羽市鳥羽のミキモト真珠島・真珠博物館で】

【鳥羽】アコヤ真珠1万2250個を銀製の鐘にあしらい美しく輝く「自由の鐘」―。来年の大阪・関西万博に出展する三重県ブースの目玉展示にすると県が先頃、発表したミキモト真珠島(鳥羽市)所有の真珠の美術工芸品「自由の鐘」は、同市の真珠博物館で常設展示されている。昭和14年のニューヨーク万博に展示され、豪華さから、〝100万ドルの鐘〟と呼ばれたが、昨今の真珠の値上がりで、その価値はさらに増している。

自由の鐘は、真珠の養殖を世界で初めて成功させたミキモト創業者、御木本幸吉(1858―1954年)が、ニューヨーク万博に合わせて作らせた。アメリカ独立宣言で打ち鳴らされた「自由の鐘」をモチーフに、3分の1に縮小した工芸品。当時悪化しつつあった日米関係を改善したいという平和への願いを込めたという。

鐘は、制作から80年以上経った今も美しい輝きを放ち、来館者の人気となっている。高さ93センチ、幅71センチ。ミキモトの養殖場で採取したアコヤ真珠1万2250個を使って銀製の鐘を覆い、366個のダイヤモンドを配した。実際の鐘にある亀裂は、青色の真珠で表現。台座は、漆と白蝶貝の貝殻で装飾し、鐘をつり下げる垂木(たるき)には、黒蝶貝の貝殻があしらわれた。制作には、銀の打ち出しや漆芸などそれぞれの職人が携わった。ニューヨーク万博で日本館の呼び物となったという。

広報担当の石川愼吾営業部兼経営企画室部長は「博物館の中でも重要な工芸品の一つで、万博出品は名誉なこと。厳しい世界情勢が続く中、制作当時と同様に平和への願いを鐘に託したい。当時の技術者の思いや養殖真珠のクオリティの高さを見てもらい、改めて真珠の素晴らしさに注目してもらえたら」と話していた。