生活保護停止処分取り消し 津地裁判決、車保有巡り親子の訴え認める 三重

【判決を受け、弁護士と握手を交わす原告の女性(右)=津市中央の津地裁で】

生活保護受給者による自動車の保有を巡り、生活保護を停止させることは違法だとして、三重県鈴鹿市の女性(81)と女性の次男(56)が鈴鹿市を訴えた裁判で、津地裁(竹内浩史裁判長)は21日、生活保護の停止を取り消すよう命じた。

判決などによると、親子は病気などを理由に、令和元年8月から生活保護の受給を始め、令和3年7月には、通院目的に限って車の保有や利用を認められた。

その際、市は運転経路などを記入した運転記録票を提出するよう求めていたが、一部の提出にとどまり、通院以外にも使用していたことなどから、令和4年9月、生活保護の支給を停止した。

竹内裁判長は判決で、走行距離や運転経路などの記入を求めた運転記録票の提出について「車両の利用目的を確認するのには過剰の疑いがある」と指摘。

「日常生活に必要不可欠な買い物などで(車を)利用することは、原告が自立した生活を送ることを資する」とし、通院以外の利用を「軽微な違反」と位置づけた。

その上で「停止処分は原告らの違反が軽微であったにも関わらず、多大な不利益を与えた。相当性を欠き違法」と結論付け、慰謝料などとして親子に10万円ずつを支払うよう市に命じた。

原告側の芦葉甫弁護士は判決後の記者会見で「求めていた結論で先進的、画期的な判決。今後のリーディングケースとなる」と述べ、他の自治体にも影響があるとの認識を示した。

同市の末松則子市長は「本市の主張が認められなかったことは残念な結果。今後は上級省庁や代理人弁護士と協議し、判決内容を精査して対応する」とのコメントを出した。