大観小観 2024年3月20日(水)

▼カタカナやアルファベットで構成する言葉の覚えが悪く、本紙連載『半導体漫遊記』の熱心な読者でないのは恐縮だが、19日掲載分は見出しが「NHK報道に落胆」。身近な業界で取っつきやすかった

▼台湾の半導体メーカーTSMCが熊本県に進出するというので特に九州が沸き立っているのは周知の通り。うち佐賀県が主催したシンポジウムで著者湯之上隆氏が招かれ、基調講演などした体験談だが、取材した現地のNHKが氏の話を無視して報じたというのは“報道の自由”ということでひとまずおく

▼後日、NHKの別の番組からインタビューを申し込まれ、応じたら「ニュートラルな立場で報道したい。批判的なコメントは採用できない」と言われ、驚き、あきれたというのだ

▼こちらの業界についてはあまり詳しくないか。朝日新聞と全面対決となったNHK番組改変問題も、きっかけは取材時の説明と報道内容が違ったことだ。東京五輪映画製作のドキュメント番組では、物議をかもした内容を映画製作側から否定され、あっさり謝罪した

▼かんぽ生命保険の不正販売報道を巡っては、NHK会長を経営委員会が厳重注意した際の会議の録音データを、NHKが「消去した」と主張したのに東京地裁は認めず、開示命令を出した。信用されていないのだ

▼TSMC進出はニュートラルというより、日本の半導体にプラス報道一色。湯之上氏は「それほど期待はできない」と指摘する。科学の世界で孤立するのはガリレオ以来、名誉、と児玉龍彦東大名誉教授は言っている。