女児虐待死、母に懲役6年 津地裁判決「身勝手かつ短絡的」 三重

昨年5月、津市の自宅で三女=当時(4つ)=に暴行を加え死亡させたとして、傷害致死の罪に問われた工員中林りゑ子被告(43)=松阪市飯南町=に対して、津地裁(西前征志裁判長)は8日、懲役6年(求刑懲役8年)の判決を言い渡した。

西前裁判長は判決で「長女、次女と比べて差別的に扱い、ネグレクト(育児放棄)や暴行を繰り返した」と指摘。「育児が思い通りにいかないことにいらだち、安易に暴行に及んだ」と述べた。

さらに「三女の発達に遅れを感じていたが、周囲に相談せず、犯行に至る経緯や動機は身勝手かつ短絡的」と強調。「慕っていた母親から暴行を加えられた三女の精神的、肉体的苦痛は計り知れない」と話した。

一方で「本件各暴行は三女を転倒させ、頭を打ち付ける危険性のある行為だったが、頭部への打撃を目的とせず、突発的。同種の児童虐待の中で、中程度からやや軽い」と位置付けた。

その上で「被告が事実を認めて反省し、被告の母親が社会復帰後の身元引き受けや雇用を約束。長女と次女は被告が早く戻ってくるよう願っている」として、懲役六年が相当と結論付けた。

最後に裁判官と裁判員からのメッセージとして「自分を大事にしないと他人を大事にできない。自分の心と体を大切にしてほしい。残された二人の娘のために、更生の道を歩んでください」と語りかけた。

判決などによると、中林被告は昨年5月、当時住んでいた津市の自宅で三女のほのかさんが乗った布団を引っ張り上げて転倒させた。翌日には背中を右手で殴り、乗っていた高さ31センチの机から転落させ、死亡させたとされる。

事件を巡っては、三女に虐待の疑いがあることを把握した児童相談所が一時保護を見送った。その後も安否を一年近く直接確認しておらず、児相の対応が問題視された。

一見勝之知事は「児童相談所が関わる中で、命を守れなかったことを重く受け止めている。このような事案が二度と発生することがないよう再発防止策を講じる」とコメントした。