伝統工芸士の認定制度創設へ 県議会一般質問で県部長

【左から稲森稔尚議員、今井智広議員、舟橋裕幸議員、中川正美議員、東豊議員】

三重県議会は29日、稲森稔尚(草の根運動いが、3期、伊賀市選出)、今井智広(公明党、5期、津市)、舟橋裕幸(新政みえ、8期、津市)、中川正美(自民党、11期、伊勢市・鳥羽市)、東豊(草莽、4期、東紀州)の5議員が一般質問した。小見山幸弘雇用経済部長は伝統産業の振興や継承などを目的として、県内の伝統工芸士を認定する制度を設ける考えを示した。舟橋議員への答弁。

 
旧基準の木造住宅耐震化は36・7%

稲森 稔尚議員(草の根運動いが)

県内で旧耐震基準の昭和55年以前に建築された木造住宅の耐震化率を尋ねた。県当局は同年以前に建築の住宅で、耐震性が確保されている割合が36・7%にとどまっていると報告した。

【耐震化】
稲森議員 能登半島地震により、石川県では6万戸近い家屋で倒壊などの被害があった。地震発生時に住宅が持ちこたえていることが避難の大前提。旧耐震基準で建築された住宅の耐震化に関する県内の現状は。

佐竹県土整備部理事 旧耐震基準で建築された居住者がいる木造住宅は平成20年時点で19万7400戸あったが、令和4年では13万9280戸と減少傾向。うち耐震性がある住宅は36・7%に当たる5万1150戸と推計される。

【学び直し】
稲森議員 日本は20代前半で学びを止める国だと言われる。学びをしていない労働者の割合は52・6%と、突出して高い。リカレント教育(社会人の学び直し)を当たり前にするため、どのような役割を果たすのか。

後田政策企画部長 学び直しによる生産性の向上が人手不足の解消につながるよう、政策企画部に新しい組織を設けて庁内の調整を図る。「リカレント教育プラットフォームみえ」との連携も深め、リカレント教育の活用を検討する。

高度救命、4月に三重大指定

今井 智広議員(公明党)

特に重篤な患者を受け入れる「高度救命救急センター」の指定を受けた医療機関が県内にないと指摘し、現状を尋ねた。県当局は4月に三重大医学部付属病院を指定すると報告した。

【地域枠】
今井議員 県内の高等教育機関に地域枠を設置すれば、若者の県外流出を防げると思う。三重大は生物資源学部で新たに地域枠を設ける。県が高等教育機関に地域枠の設置を呼びかけるべきだと思うが、知事の考えは。

知事 三重大は国立大なので、地域枠の設置は国との協議が必要。他県から来たいという人たちを排除してしまうのも、いかがなものかと思う。ただ、一つの切り札になるとは思っている。産官学の場などで話を進めていきたい。

【高度診療】
今井議員 高度救命救急センターの指定を受けている医療機関が、県内にはない。全国では34都道府県で47施設が指定を受けている。国からの権限移譲によって県が指定できるようになったが、現状は。

小倉医療保健部長 関係者と協議や検討を進めてきた。4月1日付で三重大医学部付属病院を指定することについて、県医療審議会の部会から承認が得られた。指定後は受け入れ実績などの報告を求め、機能の充実に向けた支援を進める。

水道インフラ更新進める

舟橋 裕幸議員(新政みえ)

能登半島地震の被災地で断水が長期化していることを受け、水道インフラの被害を防ぐ取り組みについて質問。企業庁は施設の耐震化や老朽化した設備の更新を進めていると説明した。

【水供給】
舟橋議員 企業庁の水道用水と工業用水の供給が止まれば、県民の暮らしや地域経済の大きな障害となる。地震や風水害による被害を最小限にとどめる準備が必要で、特に老朽化した施設や管路の対応は急務。現状は。

山口企業庁長 能登半島地震では断水が長期化し、生命を守る水の大切さが再認識されている。企業庁は浄水場や水道橋などの耐震化を進めてきた。ポンプなどの施設も定期的な点検で劣化の状況を把握し、更新を進めている。

【伝統工芸】
舟橋議員 県は伝統工芸品を認定する制度を設けているが、伝統工芸士の認定制度はない。全国では、19都府県が制度を設けている。社会的評価を高め、次世代への継承に寄与することが期待されるが、県の対応は。

小見山雇用経済部長 事業者へのアンケートでは、制度があれば技術や知名度、社会的評価などの向上につながるとの期待があった一方、認定や審査の方法などに関する意見もあった。これらの意見を踏まえながら、前向きに取り組む。

踏切に点字ブロック要請

中川 正美議員(自民党)

視覚障害者の安全を確保するため、踏切の手前に点字ブロックを設けるよう要請。県は津新町駅前で本年度内に整備すると説明。利用状況などを踏まえて今後も整備する考えを示した。

【2024年問題】
中川議員 建設業でも4月から時間外労働の上限規制が適用されるが、現場からは、民間の工事で工期の設定が厳しくなったり、手取りが減少したりすることなどを懸念する声が聞かれる。県の取り組みは。

佐竹県土整備部理事 県では週休2日制工事の定着を目指すほか、止められない工事の交代制や土日完全週休2日制工事の導入も検討する。三重労働局と連携して適正な工期設定や週休2日の確保、時間外労働の削減などを啓発する。

【踏切】
中川議員 県内には1262カ所の踏切道があり、うち県管理道路の踏切は126カ所ある。踏切の前に点字ブロックがあれば、視覚障害者が安全に歩くことができると思う。県の取り組みは。

若尾県土整備部長 まずは、多数の高齢者や障害者が利用する「特定道路」の踏切で整備する。このうち津新町駅の踏切手前では、本年度の工事に向けて準備を進めている。特定道路以外でも、利用状況やニーズを踏まえて対策を進めたい。

震災後のまちづくり準備要請

東 豊議員(草莽)

東日本大震災を教訓に、震災後のまちづくりを円滑に進めるための事前準備に努めるよう要請。県当局は市町の職員を対象に実施している復興の研修について、内容を改善しながら継続的に実施すると説明した。

【耐震化】
東議員 能登半島地震では海上輸送で救援物資を受け入れようとしていた港湾施設で沈下や液状化の被害があった。南海トラフ地震に備えて港湾の岸壁を耐震化することが重要だと考えるが、耐震化の現状と方針は。

若尾県土整備部長 県の港湾では、背後地域の被害想定や道路網の整備状況、港の役割などを勘案して岸壁を耐震化してきた。能登半島地震を踏まえた検証で必要となった場合は震災対策に取り組むなど、引き続き防災機能の確保に努める。

【復興】
東議員 東日本大震災では、復興まちづくりを担う人材の不足などによって復興が遅れた市町があった。災害時の復興を想定した事前準備を進めるなど、平時からの対策が必要。現状と今後の取り組みは。

佐竹県土整備部理事 復興に時間を要すると、人口の流出や産業の衰退が加速すると言われる。災害が起こる前に復興の目標を定め、住民の合意を形成することが必要。市町の職員に実施してきた研修を改善しながら引き続き実施する。