木本高野球部9人巣立ちの時 6人が県外大学でプレー それぞれの夢へ

【木本高校野球部の3年生選手たちと3年生マネジャーの濵口果那恵さん=1月、熊野市木本町の同校で】

3月1日に県内ほとんどの高校で卒業式が行われ、県立木本高校(熊野市)では硬式野球部の3年生9人も巣立ちの時を迎える。選手8人中6人が県外の大学に進学し、硬式野球を続ける。2学年総勢13人の選手で2022年秋の県大会でベスト4入りし、23年春の選抜大会の21世紀枠最終候補9校の1つに選ばれて注目された。過疎化の進む県南部を野球で盛り上げた球児たちはそれぞれの夢に向かって新たなスタートを切る。


木本高校3年の久保尊(たける)は春から近畿大に進む。1番、捕手を務めて同高として04年以来のベスト8に進出した23年夏の県大会で本塁打2本を含む打率5割の活躍を見せた。高卒即プロ入りの意思を示すか迷った時期もあったが「体も技術もしっかりしてプロ目指した方がいいんかなって」進学を決断。今後は外野手に専念する予定で「プロにもなりたいし大学ジャパンに選ばれることが目標。とにかく走攻守全部のレベルを上げたい」と話した。

市内の有馬中時代、県内の甲子園常連校と迷った末に地元にとどまると決めた。走攻守三拍子そろった選手として一目置かれた久保の決断は同じ地域の同じ学年の中学球児の進路選択に影響した。紀宝町の矢渕中出身で22年秋の県大会で主戦を務めた3年生の榎本和真投手=龍谷大進学=は久保に誘われたことがきっかけで木本に入学した。2年秋から野球部主将の重責も担い「他の高校生にはできない経験ができた。大学では投手で侍ジャパンに入りたい」。

【春の県大会初戦で甲子園出場経験校の菰野に敗れるもタイブレークの接戦に持ち込んだ木本の選手ら=23年4月、松阪球場で】

肩を負傷した榎本に代わって23年夏の県大会で、木本投手陣の先発の柱を務めた3年生の西功一郎投手=関西大進学=は久保と同じ有馬中出身だった。「同級生も木本で野球をやるって言いよるんで」木本進学を選択。春からは久保と違う大学で野球に取り組むこととなるが「(久保の大学と)リーグが同じなのでそこで対戦できるのは楽しみ」と声を弾ませる。

22年夏の県大会が終わると野球部の選手は13人だけになった。試合前の練習補助に他校の助けを借りるなど苦労もあったが、3年生の中道祐月外野手=至学館大進学=は「部員の数は少なかったが練習ではOBの人たちが来て支えてくれたので不便は感じなかった」。周囲の支えもあって高校3年間で「野球がもっと楽しくなった」。「大学でも足や守備を生かしてレギュラーを取る」と気合いを入れ直す。

22年秋の県大会で4強入り。21世紀枠県推薦校に選ばれると最終選考に残った。23年1月の選考委員会の結果センバツ出場は逃したが、21世紀枠最終候補校の一員として過ごした経験は財産。「秋に活躍できずインタビューされなかった」と肩を落とす3年生の平山泰雅内野手=桃山学院大進学=はその悔しさを高校最後の夏にぶつけた。シード校に挑んだ3回戦の海星戦で適時打を放って19年ぶりの夏の県大会ベスト8に貢献し「高校3年間で一番印象に残る試合になった」。

部員不足の不安も23年春、1年生9人を迎えることで解消した。21世紀枠候補校の一員として報道陣の取材を受けるたび「なんでこんなに来るんだろう」と驚きを隠せなかった3年生の植田晴道外野手=中部学院大進学=は「(21世紀枠候補になって)一番良かったのは1年生がたくさん入ってくれたこと」。「木本の名前が広まったのは嬉しい」と話し、自身も大学で持ち味の打力を磨き「高校時代打てなかったホームランを」と意気込む。